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動物たちのえさ事情
 └─2019/10/18

 多摩動物公園では、無脊椎動物も含めると約300種にもおよぶ動物を飼育しています。野生で動物たちが食べているえさは多種多様で、300種それぞれにまったく野生と同じものを用意するのは不可能です。そこで、動物園で動物を飼育するには入手しやすいものを利用する必要があります。

 まずは野菜や果物です。みなさんにもなじみ深い小松菜やリンゴ、サツマイモなどは毎日使っています。これらを食べるのは、ゾウやインドサイなどの草食動物や、ニホンザルやツキノワグマなどの雑食動物です。また、えさの種類がとくに豊富な熱帯多雨林に生息しているチンパンジーやオランウータンには、動物園でもその季節にあったさまざまな野菜や果物を毎日変化をつけて与えています。


ある日納品された青果の種類

 草食動物には、野菜や果物のほかにも乾牧草や青草を与えています。これらにもそれぞれ種類があり、栄養価はもちろん、硬さや味による嗜好性によって動物ごとに変えています。


似ていますが左右で異なる乾牧草です

 肉食動物にはおもに馬肉を与えています。野生と比較して、どうしても運動量が少なくなってしまう動物園の動物たちには、脂肪分が少なくヘルシーな馬肉が適しています。正肉(骨を除いた肉)だけでは不足しがちなビタミンやカルシウムは、鶏頭などから摂取しています。また、魚を食べる動物にはアジやワカサギ、ドジョウを与えたり、虫を食べるものにはミルワームやコオロギを与えたり、一口に肉食といってもえさの種類はさまざまです。

 比較的よく市場で流通しているもので補いきれない栄養は、「ペレット」と呼ばれる動物園動物用の固型飼料から摂取しています。ペットのイヌ用にドッグフードがあるように、ツキノワグマにはクマペレット、ニホンザルにはサルペレットと、特定の動物用に栄養を計算したものが開発されています。また、必要な栄養が似ていれば、他の動物用のペレットを使用する場合もあります。


ペレットごとに形も異なります

 野生で動物たちが食べているものを完全に再現していないとはいっても、動物園で使用しているえさの種類は膨大で、ここまで紹介してきたものはほんの一部です。とある月に購入したえさの種類は約130種類もありました。そこには飼育係員の工夫がたくさん詰まっています。ご来園いただいた際に動物たちが何か食べていたら、えさに注目して見ると面白い発見があるかもしれません。

〔多摩動物公園調整係 松本干城〕

(2019年10月18日)


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