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黒と緑、そして白化型──3種の色のトノサマバッタ
 └─2019/06/28

 突然ですが皆さんに質問です。トノサマバッタと聞いて何色を思い浮かべますか? おそらく多くの方が「緑色」と答えるのではないのでしょうか。もちろんそれは大正解です。多摩動物公園の昆虫園では緑色のトノサマバッタも飼育・展示しています(写真左)。
緑色のトノサマバッタ(孤独相)
黒っぽいトノサマバッタ(群生相)

 しかし、昆虫園では他にもいろんな色のトノサマバッタを見ることができます。上の右の写真をご覧ください。これも同じくトノサマバッタです。ご覧のように黒っぽい色をしています。

 この色の違いは「相変異」によるものです。バッタは個体密度の違いによって見た目や生態が変化しますが、その現象を相変異と呼びます。

 最初に紹介した緑色のトノサマバッタは低密度、すなわちまわりにあまり仲間がいない状態で成長した「孤独相」と呼ばれる個体です。孤独相のトノサマバッタは後ろ脚が長く、跳ねるのに適した体をしており、よく野外で見られるタイプです。

 反対に黒色のトノサマバッタは高密度、すなわち仲間がたくさんまわりにいる状態で成長した「群生相」です。孤独相に比べて翅が長く、高い飛翔能力をもち、えさを求めて広範囲に移動します。かつての日本でもよく観察された、バッタが集団で農作物を食いつくす「蝗災」(こうさい)は、この黒色のトノサマバッタによるものです。

 動物園ではトノサマバッタをモグラや肉食昆虫のえさとしてもたくさん利用しており、多くの個体を高密度で飼育しています。そのため、昆虫園では色が黒い群生相をメインで展示しています。

白いトノサマバッタ(白化型)

 さて、昆虫園では緑色や黒色とはまた違う色のトノサマバッタも飼育・展示しています。それが写真3の白色のトノサマバッタです。これは相変異によるものではなく、そもそもバッタがもつ色素の欠損により起こる体色変化です。「白化型」と呼ばれるこのトノサマバッタは、通常のトノサマバッタより体が小さいのが特徴です。また、飼育していると、通常の群生相個体よりも食が細い印象を受けます。

 この白いトノサマバッタは先月2019年5月12日から約1年ぶりに展示を再開しました。日本国内で緑色・黒色・白色のトノサマバッタを展示している施設はおそらく多摩動物公園だけです。トノサマバッタの色や形を見比べに多摩動物公園の昆虫園にぜひ足をお運びください。

〔多摩動物公園昆虫園飼育展示係 髙田瑞希〕

(2019年06月28日)


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