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まどろむアフリカゾウのおとなたち、横になって眠る砥夢(トム)
 └─2019/05/31

 4月23日の朝、アフリカゾウ舎に行くと屋外放飼場の砂山に「砥夢」(トム)の寝た跡がありました。夜も寝室と小放飼場の間を砥夢は自由に出入りしているのですが、横になって眠る砥夢の場合、砂山に体の痕がきれいに残ります。

 冬の寒い頃は室内の砂山で毎晩4~5時間横になります。それが外で寝るようになったということは、砥夢も暖かい春の訪れを感じとったということでしょう。

屋外の砂山に寝た跡
放飼場で横になって遊ぶ砥夢
寝室の砂山の上で睡眠中の砥夢

 ゾウは立って眠る動物というイメージをおもちの方もいるのではないでしょうか? じつはゾウは鼻先を地面につけながら、あるいは壁に寄りかかって立ちながら眠ることもあります。私たちはこの行動を「まどろみ」と呼んでいます。電車で立ちながらうとうとする人を想像していただくとよいかもしれません。

 このようにゾウは横になって深く眠ったり、浅くまどろんだり、2つの眠り方が見られます。多摩動物公園では3頭のアフリカゾウを飼育していますが、横になって寝るのは10歳の砥夢だけで、43歳のチーキと54歳のアコはまどろむことしかありません。

 おとなのゾウはなぜ横になって眠らないのでしょうか? 生息地の環境を想像してみてください。野生でくらす動物はつねに危険と隣り合わせです。それはアフリカゾウのような体の大きな動物でも変わらず、熟睡は命に関わる行動です。おとなのゾウは、すばやく危険に対応し、群れや子どもたちを守るために、寝るときもまどろむだけです。そのおかげで子どものゾウは安心して横になることができるのです。自分の体調に不安があるときでさえ横にならないと言われています。子どもと大人の睡眠の違いを知ることで、アフリカゾウの群れの中の関係性が見えてきます。


泥遊び中のチーキ

 夜だけでなく晴れた日中も、ひなたぼっこをしながらのんびりとまどろむ姿が観察できます。また、季節が変わり気温が上がってきたので、寒い冬には観察できなかった水浴びや泥浴びも見られるようになりました。これらの行動は体を冷やし、昆虫や日差しから皮膚を守ると考えられています。豪快に水や泥を浴びる迫力のある姿は、アフリカゾウの貫禄さえ感じます。多摩動物公園にお越しの際はぜひじっくり観察してください。なお、アフリカゾウ舎で使用している砂山の砂は、ご支援頂いた動物園サポーター資金から購入いたしました。お礼申し上げます。

〔多摩動物公園北園飼育展示係 山本悠太〕

(2019年05月24日)



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