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多摩の虫ごよみ──冬のホットな出会い「コミミズク」
 └─2019/02/08

 「コミミズク」を知っていますか? フクロウの姿を想像する方が多いでしょうか。でもぜひこれからは、もう1つの生きものも思い浮かべられるようになってください。

 それはコミミズクというカメムシ目(半翅目)の昆虫です。口が針のようになっていて、植物の汁を吸ってくらしています。クヌギやアラカシ、コナラなどの枝についていることが多いようですが、なかなかお目にかかることはありません。姿は木の芽そっくりで、木の一部と化しているからです。


 しかしこのコミミズク、冬になると出会うことがあります。昆虫のえさとして多摩動物公園の園内で採取した切り枝についていることがあるのです。なぜ冬なのでしょうか。

 コミミズクは幼虫で冬越しをします。幼虫は翅が未熟で飛ぶことができませんし、なにより気温が低くて活発に動きません。じっと冬の寒さに耐えているところに突然飼育係が現れて、自分が止まっている枝を切られても成すすべなし……ということではないかと推測しています。コミミズクにとってはいい迷惑ですね。「ごめんなさい」と心の中でつぶやいて野外に戻しますが、めったに出会うことができない昆虫に出会えた嬉しさは抑え切れません。そして、特徴的なかたちや見事な擬態ぶりなど、何度見ても飽きることはありません。

 みなさん、冬は昆虫がいないと思っていませんか? 寒くなったからといって昆虫は忽然と姿を消してしまうわけではありません。姿を工夫し、場所を工夫し、冬を乗り越えようとしています。出会いの少ない冬だからこそ、発見した時の嬉しさもひとしおです。冬も昆虫との出会いを楽しみましょう!

〔多摩動物公園昆虫園飼育展示係 古川紗織〕

(2018年02月08日)


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