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オランウータンの赤ちゃん「ロキ」の成長
 └─2019/01/11

 2018年6月29日、ボルネオオランウータンの「キキ」が第2子「ロキ」(オス)を出産しました(誕生のお知らせ名前決定と公開日のお知らせ)。キキは2000年10月21日生まれの18歳。出産当時17歳でした。子のロキは元気に育っています。

 ロキは誕生直後から乳を飲んでいましたが、これまで生まれた子どもたちより明らかに母乳を吸う回数が少なく、しかも体も小さかったので、研究者や獣医師に相談しながら注意深く観察してきました。

 ヒトの赤ちゃんでも、舌が短くて母乳がうまく飲めない子がいるそうです。その場合、補助ミルクを与えることがあると聞き、11月3日からヒト用の人工乳を補助的に与え始めました。すると、これまであまり見かけなかった排尿の回数が増え、お腹もぽっこり膨らむようになり、体も大きくなってきました。現在、補助ミルクは1日3回、50ミリリットルずつ与えています。

補助ミルクを飲むロキ
歯が生えた!

 しかし、ロキに関する心配は尽きず、今度は「なかなか歯が生えない!」ことにやきもきさせられました。通常飼育下では生後4か月程度で歯が生え始め、いろいろなものを手に取って口に入れるようになります。ロキは他の子どもよりも早く、生後3か月になると口に入れたものを吐き出すことなくモゴモゴするようになったものの、5か月たっても歯が生えず心配させられました。

 しかし、生後161日目に(念願の!)下の左前歯が生え始め、現在は下の2本の前歯が生え、ミルクだけではなく食べ物からも栄養が取れるようになりました。


キキ(母親)とロキ

 そして現在の一番の心配は、寝ていると母親の体からときどき両手が離れてしまうことです。オランウータンは樹上で生活する動物なので、赤ちゃんは両手両足で母親の毛を指にからみつけ、母親の脇腹にしっかりとくっついて落ちないようにしているのが普通です。さらに、オランウータンの指は特に意識しない状態では曲がった状態になり、ロックされるはずなのです……。

 最近はひとりで格子をよじ登ったりするようになったので、力がついてちゃんと長時間しっかり握っていられるように成長すればいいなと思っています。心配事はつきませんが、人間のお母さんが自分の子の成長を他の子と比較して一喜一憂されているのとあまり変わりがないのかもしれません。

 ロキは今、兄の「リキ」(6歳)や子ども好きの「ジュリー」(メス、53歳)に抱っこされたり、「チェリア」(メス、4歳)にそっと手を出して触ったり、口の周りについたミルクを「バレンタイン」(メス、32歳)に舐めとられたり、さまざまな経験を通じてゆっくり成長しています。そんなロキをぜひ見に来てください。

〔多摩動物公園南園飼育展示係 清水美香〕

(2019年01月11日)


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