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“よそもの”から“仲間”へ、ライオン雌雄同居へ
 └─ 2018/11/23

 2017年に多摩動物公園のライオンバス発着所の工事が始まり、ライオンの展示は一時中止の時期を経て、2017年5月11日以降、放飼場の一部分を区切ったエリアで午前は4〜6頭のメス、午後はオス2頭を公開してきました。オスは、繁殖のために九州自然動物公園アフリカンサファリからやってきた「ジャンプ」と「スパーク」です。

 ライオンは群れ以外の“よそもの”に出会うと、雌雄であっても激しい闘争となり殺し合いになることもあるので、これらオス2頭は繁殖を目指すときのみ発情したメスと同居させ、ふだんはオスだけにしていました。

 この2頭と違って、以前から群れの中で育ち、メスとくらしてきたオスたちは “よそもの”扱いされることはありません。しかし、年をとって体力が衰えてきたため、群れから引退させることにしました。

 しかし、最近繁殖した個体はメスしかおらず、同居していたオスがいなくなると、群れからオスがいなくなってしまいます。そこで、ジャンプとスパークには“よそもの”ではなく“群れのオス”になってもらうよう、練習を始めました。

 野生では闘争を経てオスが入れ替わることもありますが、なるべく平和に進めるため飼育担当で知恵を絞りました。メスはオスが怖いので、攻撃したり慌てて騒ぎを起こしたりしてしまいます。ところが、発情期にはオスに求愛するため、雌雄が一緒にいられるようになります。この習性に注目し、群れの中でのメスの関係性を考慮した順番を決め、1頭ずつメスを増やしていけば、うまくいくのではないかと考えました。

 ジャンプとスパークには避妊処置を行ない、事故が起こらないよう細心の準備を整え、メスの発情の状況を見据えながら、いよいよその日に臨みました。


スパークとケイコ

 2018年10月19日、最初にいっしょになったのは、「スパーク」と「ケイコ」です。ケイコは高齢ながら、これまで群れのまとめ役としてがんばってくれた頼もしいお母さん的存在です。予想通り2頭はおたがいを受け入れ、関係は安定していきました。ケイコがいればこの後に続くメスも安心です。さらに1頭ずつメスを加えていきました。


5頭がいっしょに

 10月21日に「ナナ」、11月11日は「ミサ」、14日に「ミキ」が加わり、メス4頭とオス1頭、計5頭がいっしょにいられるようになりました。

メスの存在に反応してフレーメン反応(匂いを嗅ぐ
ときに唇を引き上げる現象)を見せるスパーク
メスに囲まれ“モテモテ”のスパーク

 11月15日現在、ケイコとナナの発情は終りましたが、安定したようすでオスといっしょにいます。ミサとミキは一生懸命オスに求愛しているところです。スパークは“モテモテ”ですが、やや落ち着かないようすも見せ、腰が引けたようすや、いばったようすを見せたりすることもあります。

 こうして1年半ぶりに、ライオンを雌雄同時にご覧いただけるようになりました。なお現在、雌雄をいっしょにするのは午前中だけです。日々の観察とこれまでの飼育記録をもとにした群れの再構成──これからも工夫しながら進めていきます。どうぞ多摩動物公園でご覧ください。

〔多摩動物公園北園飼育展示係 松井由希子〕

(2018年11月23日)


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