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多摩動物公園に生息するトウキョウサンショウウオ
 └─2018/09/21

 多摩動物公園内には、飼育されている動物以外にも、野生生物が生息しています。園内の両生類は8種が確認されており、トウキョウサンショウウオもその中の1種です。なかなか目にすることのない園内のトウキョウサンショウウオについてご紹介しましょう。

 サンショウウオというと渓流や山奥をイメージする方もいますが、トウキョウサンショウウオは関東の丘陵地などに生息し、人が暮らす場所の近くでも見ることができます。成体はふだん、林や森の地面や地中で生息していますが、2~4月頃になると水辺に集って産卵し、水中で育った幼生は7〜10月頃上陸します。

トウキョウサンショウウオ幼生
トウキョウサンショウウオ幼体

 「幼生」とはカエルでいう「オタマジャクシ」のことで、トウキョウサンショウウオの幼生は上の写真のような姿をしています。多摩動物公園では一般公開していない昆虫生態園裏の池で産卵しています。この時期、周辺の倒木を動かしてみると、上陸して間もない幼体が見つかることがあります。

 園内では毎年産卵が見られるものの、気がかりなのはアライグマによる影響です。トウキョウサンショウウオは繁殖期になると水辺へ集まるため、それを狙ったアライグマに捕食される事例が報告されています。じつは園内にもアライグマが生息しており、池周辺に設置したセンサーカメラでもその姿が確認されました。

繁殖池にやってきたアライグマ
電気柵を張り巡らせた繁殖池

 以前の繁殖期にはアライグマに襲われたと思われる死体が確認されたため、昨年、池の周囲に電気柵を設置しました。センサーカメラに映ったアライグマの行動を見ると、初めは驚いた勢いで柵の内側に入ってしまうこともありましたが、一度経験したあとは寄り付かなくなったようです。


トウキョウサンショウウオの卵嚢。写真は1対の片方のみ

 今年はトウキョウサンショウウオの産卵状況を正確に把握するため、産卵が終わった後で人が池に入って産卵数を数えました。弾力のある丈夫な卵嚢を手探りで探してみると、今年は過去最高の11対の卵嚢が見つかりました。今後も調査を続け、産卵状況をモニタリングしていく予定です。

 ふだん見かけないトウキョウサンショウウオですが、昆虫生態園出口側で常時展示をしています。昆虫園へお越しの際は、園内の林でひっそりとくらすトウキョウサンショウウオに思いをはせてみてはいかがでしょうか?

〔多摩動物公園昆虫園飼育展示係 古橋保志〕

(2018年09月21日)


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