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おとなだって学習できる! オランウータンの「バレンタイン」
 └─2018/03/09

 多摩動物公園のボルネオオランウータン舎では、夕方消灯する際「おやすみ!」とオランウータンたちに声をかけて帰ります。そのたびに、「バレンタイン」(メス、1986年2月14日生まれ)は両手を叩いたり、片手や両手をあげたり、まったく無反応だったり、いろいろな反応を見せてくれます。


ボルネオオランウータン「バレンタイン」

 バレンタインは人に育てられたので、人の習慣を身につける機会があったのかもしれません。毎回同じではなく違う行動をとるのは相手が喜ぶ行動をいろいろ考えているのでしょうか? どんな反応があるのかこちらも毎日楽しみにしています。

 バレンタインは2016年12月25日に多摩動物公園へ来園するまで、交尾以外に他のオランウータンと長時間接触する機会がありませんでした。オランウータンは単独で生活する動物ですが、じつはゆるい社会性があり、子どものころに他のオランウータンと遊んだり、母親と妹や弟の世話をしたり、母親以外の母子に付きまといながら身近で観察することによって、子育てや社会性など、さまざまなことを学習すると言われています。

 バレンタインの来園は、多摩のオランウータンたちの中で社会性を身につけ、子育てができるようになることが目的です。おとなになってしまったオランウータンに社会性が身につくのか?との意見もありましたが、そんな意見も吹き飛ばすほど、バレンタインはできることが日々増えています。


左は「リキ」、右が「バレンタイン」

 オランウータンたちと同居させたとき、以前もお伝えしたとおり、ものおじしない天真爛漫な「リキ」(オス、2012年11月14日生まれ)が活躍し、他個体との接触という第1段階のハードルはすぐなくなりました。

 しかし、自分が遊びに飽きたら相手を突き飛ばす、噛み付くなどの問題行動が見られました。そのたびに長老的な存在だった「ジプシー」がバレンタインとリキとのあいだに入り、バレンタインをいさめていましたが、そういった行動を繰り返すうちにジプシーが仲裁に入ることも少なくなり、バレンタインも力加減ができるようになりました。今では相手にケガをさせることもほとんどなくなりました。

 現在、バレンタインとリキとは同世代のお友だちといった感じで、子どものころ体験できなかったことを全身で毎日学習しているようです。

 苦手だった地面にも積極的に降りてリキを遊びに誘ったり、欲しい物を取りに行ったりすることができるようになり、ますます行動範囲が増えています。

 おとなだって学習できます。日々進歩しているバレンタインをぜひ見に来てください。

〔多摩動物公園南園飼育展示係 清水美香〕

(2018年03月09日)


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