ニュース
フクロモモンガの群れ“抗争”、解決策は…
 └─2018/02/16

多摩動物公園のコアラ館ではフクロモモンガを展示しています。フクロモモンガは群れで生活をする夜行性の動物です。群れのリーダーとなるオスは、頭や胸にある臭腺(フェロモンが出る腺)を仲間に擦りつけ、マーキングをします。マーキングがないものは攻撃され、ときには死につながるほどの大ケガを負うこともあります。

 フクロモモンガの展示室では昨年(2017年)11月ごろまで「オス3頭、メス4頭の群れ」と「メス4頭の群れ」を同居させていました。しかし、展示室ではどうしても群れどうしが鉢合わせし、小さな群れの個体が攻撃を受けてしまうことがありました。

 そんな争いをなくそうと、さまざまな工夫を凝らしてきました。

◎作戦1「匂いつけ作戦」
 優位である大きな群れにいるオスの臭腺を、もう一方の群れのメスに擦りつけ、仲間だと思わせるという作戦です。しばらく同じケージに入れてようすを見ていると、匂いをかいでも襲おうとせず、一度は成功かと思われたのですが、その後すぐにばれてしまい、作戦は失敗に終わりました。

◎作戦2「ギューギュー作戦」
 「ある程度の密度を超えると争いがなくなった」という事例を聞き、小さめのケージに全頭を入れてみました。この方法は闘争のリスクもあるため、1週間を限度に試みることにしました。初めはなんども争いが生じ、また失敗か……と次の作戦を考え、リミットの1週間を迎えようとしたころ、ふとケージを見ると1つの巣箱に全頭がギューギューに詰まっていたのです。その後も争うようすがないため、展示室に戻しました。

 しかし、ほっとしたのもつかの間、数日後には再び2つの群れに戻ってしまったのです。しかたなく、少ない方の群れはバックヤードに移し、大きい群れだけを展示室に残しました。
 

巣箱内で子育て中のフクロモモンガ(左からオス、メス、子ども)

 どちらの作戦も失敗に終わってしまいましたが、環境の変化がよい刺激となったのか、それまで見られなかった繁殖行動が7頭の群れで確認されるようになりました。そして3頭の新たな命が誕生し、現在子育て真っ最中です。フクロモモンガたちの懸命な子育てをあたたかく見守ってください。そして動物園を訪れた際は、動物だけでなく、動物を取りまく環境にもぜひ目を向けてみてください。飼育係によるさまざまな工夫のあとがあるはずです。

〔多摩動物公園南園飼育展示係 星純蘭〕

(2018年02月16日)


ページトップへ