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オガサワラシジミの周年飼育に新たに成功しました──2016~17年 第7世代まで誕生
 └─ 2017/11/09

 多摩動物公園では環境省が進めるオガサワラシジミ保護増殖事業の一端を担い、2005年からオガサワラシジミを非公開で飼育繁殖し、生息域外保全に取り組んでいます。

 このたび第6世代の交尾に成功、第7世代が孵化し、導入から1年以上の飼育を初めて継続させることができましたのでお知らせします。


オガサワラシジミの成虫

飼育中のオガサワラシジミについて
 2016年10月3~9日  小笠原諸島母島にてメス成虫を捕獲。
       7~10日 母島にてメス成虫2頭から採卵を実施。採卵後、メス成虫は全て放野。
       17日   孵化幼虫41頭を多摩動物公園に搬入(飼育下第1世代)。

 ※現在飼育中のオガサワラシジミは、このとき搬入した個体から繁殖を繰り返し、継続飼育しているものです。

これまでの経過
 多摩動物公園では、2010年5月に飼育ネット内でのオガサワラシジミの交尾に成功しましたが、次世代はその方法では交尾せず、その後も不成功に終わっていました。

 それまでの取組みにより、採卵技術及び卵から成虫までの飼育技術はほぼ確立しており、交尾の成功が長期継続飼育の鍵となっていました。そのため、必要な空間、温湿度などの諸条件を見直し、2014年と2015年、足立区の協力を得て足立区生物園を借用し、放蝶による交尾試験をおこないました。いずれも、飼育下第1世代で複数ペアの交尾に成功しましたが、次の第2世代では不成功でした。

交尾のようす

 2016年に園内に新設したビニールハウスを使用して交尾試験を実施したところ、羽化した飼育下第1世代は11月25~30日に9ペアが交尾し、続く第2世代も2017年1月27日から計19ペアが交尾、繁殖しました。その後も、同様の方法で次世代が得られ、搬入から1年以上経過した現在、飼育下第6世代が羽化して交尾に成功、採卵した卵から第7世代の幼虫が11月8日に孵化しています。

オガサワラシジミ生息域外保全について
 2005年から環境省、文化庁、東京都、研究機関などがオガサワラシジミ緊急保護の必要性から継続的に実施してきた「オガサワラシジミ保全連絡会議」に当園も参加し、会議実施当初から飼育展示課昆虫飼育係で飼育繁殖を始めました。
 2008年8月には種の保存法に基づく国内希少野生動植物種に指定され、2009年3月にはオガサワラシジミ保護増殖事業計画が策定されました。2011年から、環境省による「小笠原希少昆虫保護増殖事業連絡会議」が開催され、生息域内・域外それぞれの対策事業を関係各所が分担してオガサワラシジミの保全活動を進めています。当園では、累代飼育技術の確立を柱とし、生息地状況に係る普及啓発や現地活動との連携をおこなっています。

公開について
 非公開で飼育繁殖しています。ご了承ください。

国内の飼育状況(2017年11月9日現在)
 成虫55頭(オス22、メス33)
 国内では当園でのみの飼育です。

その他
 オガサワラシジミをテーマとした小笠原保全講演会「小さなチョウをはぐくむ大いなる自然」を2017年12月9日(土)に開催します(詳細はこちら。参加申込みは11月30日まで)。
 また、あわせて、オガサワラシジミやそれを取り巻く環境、多摩動物公園での取組みについて紹介するミニ企画展を開催、いままで展示していなかったオガサワラシジミ成虫の標本も展示します。

 期間  2017年12月7日(木)~2018年1月30日(火)
 場所  昆虫園本館2階 標本展示室、本館1階 ふれあいコーナー前

(2017年11月09日)


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