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チンパンジーの嫁入り「サクラ」は挨拶上手!
 └─2017/10/06

 多摩動物公園のチンパンジー「サクラ」(メス、8歳)は2017年2月22日、高知県立のいち動物公園から繁殖を目的に来園しました。

 野生のチンパンジー社会では、メスの多くは成長すると他の群れに移動します。しかし移動先の群れで激しく攻撃され、ときには命を落としたり、移動には危険がともないます。これは飼育しているチンパンジーにとっても同様です。サクラを群れに入れた経過についてご紹介しましょう。

 サクラの来園後、まず非公開の運動場に慣らすことから始めました。非公開の運動場は、群れの個体から攻撃されそうになっても逃げられる十分な広さがあります。

 最初はサクラ1頭で運動場に出しました。ところが、夕方になっても室内に戻ってきません。どうやらサクラは寝室と運動場をつなぐ通路が暗いため怖かったようで、大好物の食べ物で誘導を試みても、結局その日は運動場から戻って来ませんでした。

サクラ
ベリー(左)に挨拶をするサクラ
人工アリ塚でえさを採るサクラ(右)とそれを見ているベリー

 翌日、以前他の動物園から来た個体に対して優しく接していた「デッキー」(オス、39歳)を、サクラのいる運動場に出しました。このデッキーの投入が功を奏し、サクラも不安な気持ちを解消できたのか、デッキーの後をついて歩くようになり、ようやく3日目にデッキーといっしょに寝室へ戻って来ました。これを機に、サクラは寝室と運動場をスムーズに出入りできるようになりました。

 続いてデッキー以外のチンパンジーとの顔合わせを格子ごしに順次おこないました。初めはすべての個体から攻撃的な反応を示されていましたが、サクラが臆さず挨拶を続けた結果、徐々に攻撃的な反応を示されなくなりました。中でもいちばん友好的だったのは、サクラより7歳年上の「ミル」(メス)です。そこで私たちは非公開の運動場でサクラとミルを同居させることにしました。

 社会性をもつチンパンジーは、おたがいに「挨拶」の行動を見せます。相手にお尻を見せたり(写真中)、抱き合ったり、キスをしたりするのがチンパンジーの挨拶です。その際、「オッ、オッ、オッ、オッ」といった声を発することもあります。

 サクラは初日からミルに上手に挨拶をし、喧嘩することもありませんでした。2頭はお互いに毛づくろいをしたり、仲のよい関係を見せてくれたのです。その後、サクラが他個体と同居する際、ミルはサクラを守ってくれる頼もしい存在になりました。

 以降もサクラは他個体との同居の際、一生懸命挨拶を繰り返し、現在、少頭数の組み合わせであれば、多摩動物公園で飼育している全18頭の個体と同居できるようになりました。

 しかし、一度安全に同居できた個体でも、その組み合わせや頭数が異なると攻撃的な態度に変わることもあるので、現在は組み合わせのパターンを変えながら、サクラと他個体の同居を進めています。最終的には、サクラと他の個体の関係を見極めて、公開エリアにデビューさせることになります。サクラがみなさんの前に登場するまで、どうぞ楽しみにお待ちください。

◎関連記事
・「多摩へようこそ!チンパンジーの『サクラ』」(2017年3月10日)
・「チンパンジーが高知県立のいち動物公園から来園しました」(2017年2月23日)

〔多摩動物公園飼育展示課 田口陽介〕

(2017年10月06日)


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