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オオカミたちの夏
 └─2017/08/25

 多摩動物公園の「アジアの平原」にあるタイリクオオカミの放飼場を前にして、「あれ? オオカミはどこ?」と思われることがあるかもしれません。たしかに、放飼場を見てもオオカミの姿が見えないことがしばしばあります。

 しかし、オオカミ舎の大きな放飼場では、開園時間延長日の除く毎日、16時ごろまで「チロ」「ロイ」「ロト」「ロキ」の4頭のオオカミが生活しています。


左から「チロ」「ロイ」「ロト」「ロキ」

 暑さの厳しい夏、彼らは居心地のよい木陰や日陰を見つけて寝転んでおり、姿が見えにくいことが多いのです。

 そこで、あまりにも暑かったある日、暑さの苦手な彼らに“肉氷”をプレゼントしました。肉氷は馬肉を入れて凍らせた氷。奪い合いのけんかが起きないよう、しっかり頭数分の氷を用意し、放飼場にオオカミを出しました。

 氷の姿を視界にとらえると、全員の足がピタッと止まります。たとえそれがおいしいものだとしても、彼らは見慣れないものに対してとても慎重です。ゆっくり間合いをつめ、相手の出方をうかがいます。しばらくして相手に動きがないとわかると、ゆっくり近づいて行きます。安全を確認したらペロペロなめたりかじったり、鼻先で押してみたり、それぞれ楽しみ方は異なります。

氷を一生懸命かじるチロ
茂みに隠れて肉氷に夢中のロト


 興味深いことに、チロが一生懸命ペロペロと氷を楽しんでいたと思ったら、おもむろにきょろきょろし始め、氷に夢中になっているロトのもとへ行き、かたわらでじっと見つめていました。自分の氷はあるのに「隣の芝生は青い」ということでしょうか…。

 また、オオカミの姿が見えなかったり、じっとしている姿しか見られないときは、放飼場のあちこちに目を向けてみてください。地面に落ちたコロコロとした糞、換毛期に抜け落ちて枝木に絡まった毛、オオカミたちが掘ったと思われる穴などに気づくことでしょう。放飼場に姿が見えなくても、そうした発見を手がかりに動物の気配を感じることができると思います。

 オオカミにかぎらず、ほかの動物でも同じです。放飼場にはそれぞれ動物たちのくらしの痕跡が残っているのです。それらをじっくり探すのも動物園の楽しみ方の一つだと思います。

〔多摩動物公園南園飼育展示係 比留間麻海〕

(2017年08月25日)


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