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割れたエミューの卵の謎
 └─2017/03/24

 現在、多摩動物公園ではエミューを4羽(オス2羽、メス2羽)飼育しています。エミューはオーストラリアに生息する鳥です。野生では冬に繁殖シーズンを迎えるといわれています。当園のエミューも気温の低い1月中旬からメスが卵を産み始めました。

 エミューのメスは2、3日おきにどんどん卵を産んでいきます。ただし、抱卵するのはオスの役目で、一度に抱卵する数は5卵から15卵ほどです。私たち飼育係もメスが順調に卵を産み足し、いずれはオスが抱卵し始めることを期待していました……が、産卵が始まってから放飼場で見つかる卵は、ことごとく割れていたのです。

 原因は何なのか。私たちは産卵後に卵が転がり、放飼場の段差から落ちるなどして割れてしまったのだろうと、まずは考えました。そこで、卵が割れてしまっていた場所付近一面にワラを敷いてようすを見ることにしました。しかし、放飼場に卵が割れた状態で落ちている状況は、それ以降もしばらく続きました。

 次に、私たちはエミュー自身による「食卵」が原因なのではないかと考えました。食卵とは、産卵した鳥が卵を食べてしまうことです。そこで今度は放飼場に擬卵(卵に似せて作った人工物)を何個か置いてみました。これで食卵を防ぐという作戦です。

 無精卵の中身を取り除いた卵殻標本が保存されていたので、それにモルタルを詰めて擬卵を作成し、放飼場に置きました。中身がモルタルの擬卵はもちろん食べられません。エミューが食べられないと判断し、そのままオスが営巣して抱卵につながるのではないかとと考えたのです。


落ち葉で隠された擬卵

 設置直後からオスが擬卵に落ち葉をかけて隠す行動が見られ、数日後にはそこに産み足されて落ち葉に隠されていた本物の卵を回収することができました。さらについ先日、しばらく放置気味だった擬卵の上にオスが座り、抱卵しているようすも無事確認することができました。


擬卵を抱くエミューのオス

 今後、回収した卵は孵卵器に入れ、有精卵だった場合は孵化直前の時点で、オスが抱いている擬卵と交換する予定です。このまま卵が順調に孵化し、元気なエミューのひなの姿をみなさんにお見せできる日を楽しみにしています。

〔多摩動物公園南園飼育展示係 兒島匠〕

(2017年03月24日)


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