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第一位の座を狙うチンパンジー「ボンボン」
 └─2017/01/27

 多摩動物公園では現在、子どもを含めた17頭のチンパンジーを飼育しています。チンパンジーは群れでくらす動物ですが、その群れには序列があります。まず、アルファオスと呼ばれる群れの第一位のおとなのオスがいて、次にその他のおとなオス、おとなメス、若者、子どもと続きます。群れの中では、おおよそ10歳前後までが若者の位置づけです。

 今回は、まさに今おとなへの階段を上っている最中のオスの「ボンボン」(11歳)をご紹介します。


昨年(2016年)11歳になったボンボン

 ボンボンの変化は、運動場での他の個体との関わり方から観察することができます。最近のボンボンは「ディスプレイ」と呼ばれる誇示行動が目立つようになってきました。毛を逆立てて走り回ったり、壁を蹴ったり叩いたり……。自分の力強さをこれでもかというほどアピールします。それに伴い、まわりのおとなメスたちも徐々にボンボンに対して自分が劣位だと示す挨拶をするようになってきました。しかし、ボンボンはアルファオスである「ケンタ」(36歳)に対しては少々弱気で、ケンタが同じ運動場に出ているときにディスプレイをすることはほとんどありませんでした。


毛を逆立ててディスプレイをするボンボン

 ところが、昨年(2016年)12月のことです。裏側にある非公開の運動場で飼育係がいつものように収容作業をしていると、表の運動場で騒ぎが起こったらしく、ケンタと同じ運動場に出ていたボンボンのディスプレイの音が聞こえてきたのです。その日、運動場から帰ってきたケンタの体は傷だらけで、ボンボンとその母親の「チェリー」(26歳)も傷だらけだったことから、ケンタに傷を負わせたのはおそらくボンボンかチェリーだと想像できました。

 その日以来、ボンボンはケンタに劣位個体としての挨拶をすることはなくなりました。偉そうに振舞うボンボンとケガのせいで調子が出ないケンタを、他の個体たちはとても気にしているようでした。

 これでボンボンがケンタとの力関係を逆転させるかと思われましたが、ケンタの調子が元に戻ると、ボンボンもケンタの前ではディスプレイをしなくなり、弱気な立場に戻ってしまいました。今はまだ、群れで騒ぎが起こると他の個体たちはケンタに助けを求めます。ボンボンがケンタの地位を狙うには、もう少し時間がかかりそうです。

 多摩にはあと2頭、若者オスの「マックス」(9歳)と「ジン」(8歳)がいます。このままボンボンが力をつけていくのか、この2頭が成長して若者オスどうしが頂点争いを繰り広げるのか……こればかりは飼育係も予想がつきません。

 おとなになっていくチンパンジーのオスたちのようすを多摩動物公園でぜひ観察してみてください。

〔多摩動物公園北園飼育展示係 高岡智子〕

(2017年01月27日)


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