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とんがりあたまの正体
 └─2016/06/03

 鮮やかだった新緑も色濃くなり、すでに夏の気配が感じられる季節になりました。園内の生き物たちの活動も日々変化しています。

 そんなある日、多摩動物公園昆虫園の裏手にあるエノキの葉に異変が起こっていました。なんと、葉の裏にも表にもとんがり頭がにょきにょきと並んで生えているではありませんか。これはどうしたことでしょう。つぼみ? 実? 葉の上に花を咲かせる植物として「ハナイカダ」が有名ですが、エノキにそういった特徴はありません。

とんがりあたま
(エノキトガリタマバエの虫こぶ)
ハナイカダ
(葉の中央に花が咲き、実を結ぶ)
虫こぶの中の幼虫
(エノキトガリタマバエ)

 これは「虫こぶ」です。虫こぶは「虫えい」や「ゴール」とも呼ばれます。虫のしわざに植物が反応してできるものです。調べてみると、エノキトガリタマバエという昆虫がエノキに産卵することで作られる虫こぶだとわかりました。

 調査のためにひとつだけ失礼して中を見させてもらうと、中はきれいな空洞で、体長3~4ミリほどのウジムシ状の幼虫が確認できました。虫こぶは6月頃成熟して地面に落下し、幼虫のまましばらく虫こぶの中で過ごします。なんとそのまま冬を越し、春を迎えると蛹になって3~4月頃ようやく羽化するようです。とんがり頭の虫こぶはエノキトガリタマバエにとっては大事なゆりかごなのでした。

 さまざまな種類の植物にさまざまな虫こぶが見られます。形によっては見るのが苦手な方もいらっしゃるかもしれませんが、中には芸術作品のような美しい虫こぶもあり、その姿かたちは多種多様です。昆虫と植物の関係が生み出す作品を探しにいってみるのもよいかもしれませんね。

〔多摩動物公園昆虫園飼育展示係 古川紗織〕

(2016年06月03日)


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