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ツマベニチョウの羽化、動画でご紹介します!
 └─2016/01/30

 ツマベニチョウは、九州南部から南西諸島にかけて分布する南国のチョウです。日本産のシロチョウ科では最大の種で、前翅長(前翅のつけねから先端までの長さ)は約50ミリもあります。生態園のチョウの中でも体が大きく、翅の先のオレンジ色がとても鮮やかなため、とても見栄えのする人気のチョウです。

 蛹も大きく、長さが約50ミリもあります。蛹の中では幼虫期の器官の大半がいったん分解され、羽化に向けて大きく体が変化していくのですが、ツマベニチョウはそのようすが観察しやすく、羽化までの色の変化がよくわかります。

 蛹化したばかりのころは透明感のある薄い緑色をしており、食草であるギョボクの葉の裏についていると見落としがちで、非常に有効な保護色であることがわかります。この緑色の蛹が、羽化が近づいてくるとだんだんと翅の模様が透けて見え始め、オレンジ色が強く出てきます。


羽化が近づいたツマベニチョウの蛹

 このオレンジ色がくっきりと変化し、背中部分の白っぽい部分がお尻のほうまで広がっていくと、まもなく羽化が始まります。この白っぽい部分は羽化間近の成虫の体と蛹の殻の間にできた隙間で、これで羽化の準備が整ったことがわかります。羽化の準備が整うまでの変化を動画でご覧ください。

【ツマベニチョウの蛹の変化】

 完全にとはいきませんが、羽化までの時間が予測できたので、インターバル撮影で記録することにしました。羽化が始まったら撮影を始め、約6秒ごとに1枚の写真を撮り、それを動画に編集しました。

【ツマベニチョウの羽化】

 蛹の頭の部分がぱかっと開き、のけぞるようにチョウが出てしてきます。そしてするりと全体が抜けて、脚でしっかりと抜け殻につかまり、翅を伸ばしていきます。羽化が終了するまでの時間は約10分間です。羽化したての脚でしっかりと蛹につかまって落ちないようすは、生物としてのたくましさを感じさせます。

 自然界では、ツマベニチョウはとても動きが早く、じっくり観察することがなかなか難しいチョウです。しかし、生態園の中では比較的近くに寄ってくることもあり、オスとメスの翅の違いもよく見ることができます。

ツマベニチョウ(オス)
ツマベニチョウ(メス)

 また、入口近くには食草のギョボクを置いてありますので、産卵のようすを観察できるかもしれません。生態園のチョウの主役といえばやはりオオゴマダラですが、オレンジ色が美しいツマベニチョウにもぜひ目を向けてみてください。

〔多摩動物公園昆虫園飼育展示係 片田菜美〕

(2016年01月30日)


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