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キリンのノゾミおばあちゃんの不思議
 └─2015/11/20

 今年(2015年)夏に23歳を迎えたノゾミは現在、国内で飼育されているキリンの中で5番目におばあちゃんのキリンです。飼育下でのキリンの寿命は20〜25歳といわれているので、ノゾミの年齢からもおばあちゃんだとわかると思います。

 国内で飼育したキリンの最高齢記録は31歳のオスですが、多摩動物公園での最高齢記録はメスの「ナガエ」の29歳です。


2015年夏に23歳を迎えたキリンのメス「ノゾミ」

 ノゾミを見わけるのに一番わかりやすい部分は頭の上の2本の角です。他のキリンはふさふさと毛が生えていますが、ノゾミの角は毛がなくゴツゴツしているので、ぜひ確認してみてください。


左が「ノゾミ」。右は18歳の「アオイ」。ノゾミの角は毛が少なくゴツゴツしている

 「おばあちゃん」といっても、今のノゾミはよく食べ、動きも軽やかで、まだまだ元気な姿を見せています。来園者の方から「おばあちゃんには見えないね!」というお言葉を頂くこともあります。私にとってノゾミは、いつもマイペースな調子でえさを食べたり、お気に入りの場所で反芻をしている姿が印象的です。

 ところが、先輩飼育係にノゾミの昔の話を聞いてみると、かつてはよく前肢を振り上げて前蹴りをするなど、飼育係に対して威嚇行動を見せていたそうです。若いキリンはみなとても元気のよい時期があるのですが、今の穏やかなノゾミからはとても想像がつきません。先輩飼育係の言葉を借りれば、多摩動物公園のキリンの群れが落ち着いているのは、どんなことにも動じないノゾミのおかげです。

 そんなノゾミですが、不思議な行動が見られます。キリンの部屋にユーカリの枝をつけると他のキリンはすぐ食べ始めるのですが、ノゾミはまず身体をすりつけ、まるで「ユーカリ浴」をしているかのような行動を始めます。また、2008年の最後の出産以降、ノゾミのおっぱいから今もミルクが出続けています。

 この「ノゾミルク」(と私たちは呼んでいます)を口にすることが許されているのは9歳のオスの「カンスケ」だけです。なぜ、ノゾミがカンスケに対して寛大なのかはわかりません。そしてカンスケがミルクを飲んでいるときを狙って、反対側のおっぱいにそーっと近付き吸いつくことをおぼえたキリンがいます。それはまったく血縁関係のない9歳のメス「ユーカリ」と、カンスケの息子で1歳の「ワビスケ」です。2頭もカンスケがいないとノゾミに近づけませんが、ちゃっかりした2頭が見せるほほえましい光景です。

 ノゾミにはこれからも群れの「重鎮」として、元気に長生きしてほしいと思っています。

〔多摩動物公園北園飼育展示係 齊藤美和〕

(2015年11月20日)



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