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ユキヒョウ「シンギズ」、長いあいだありがとう
 └─2015/11/06

 お知らせしたとおり、多摩動物公園では2015年10月10日、ユキヒョウ「シンギズ」の死亡を確認しました。


 シンギズは野生由来の個体なので正確な年齢はわかりませんが、2000年10月13日に多摩動物公園に来園して以来15年間、私たちにユキヒョウのすばらしさを伝えてくれた個体でした。

 シンギズは、カザフスタン共和国のナザルバエフ大統領と日本の小渕首相との間で交わされた友好の証として、カザフスタンから日本に贈られました。ユキヒョウの野生個体が動物園に導入されることは当時でもほとんどなく、世界的にもシンギズの来園は大変注目を集めました。

 世界で飼育されているどのユキヒョウとも血縁関係のないシンギズは、繁殖がもっとも期待される存在となりました。シンギズはその期待に大いに応え、4頭のメスとのあいだに16頭もの子どもをもうけ、その子どもたちは日本各地だけでなく海外にも渡り、孫世代も誕生しています。

 現在国内で飼育されている20頭のユキヒョウのうち、半数以上の12頭がシンギズの子どもや孫です。シンギズの来園がなければ、日本で飼育されているユキヒョウの数はもっと少なくなっていたかもしれません。


 若い頃は、部屋に戻らず担当者と追いかけっこをしたり、格子ごしに代番者に飛びかかって驚かせたり、やんちゃな武勇伝を多く残していたシンギズですが、年とともに丸くなったのか、2年前に担当になった私の印象は、「とても柔軟に対応してくれるユキヒョウだなぁ」というものでした。

 大好きな屋外では、真っ黒になるまで地面や丸太に顔をこすりつけたり、枝や落ち葉を入れるとごろごろ転がったり、お気に入りの場所で寝そべったり、誰よりも楽しそうに過ごしていました。

 シンギズの死後、ほんとうに多くの方々からお花やメッセージをいただきました。あらためて、シンギズの存在の大きさを実感しています。繁殖などを通じてシンギズが果たした貢献は、次世代のユキヒョウたちがさらに未来へとつないでいってくれると思います。シンギズ、長いあいだほんとうにありがとう。

〔多摩動物公園南園飼育展示係 高津磨子〕

(2015年11月06日)



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