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「シフゾウ舎」でくらしています──シフゾウ、スイギュウ、ニホンカモシカ
 └─2015/07/10

 多摩動物公園のアジア園シフゾウ舎では、シフゾウ、スイギュウ、ニホンカモシカを展示しています。

 シフゾウは大型のシカで、角が毎年生え変わるのはオスだけです。現在、オス1頭とメス3頭がいて、オスの「アオバ」(8歳)は2015年5月4日に「破角」し、発情期を迎え、オスとしてのたくましさが全身からあふれています(破角とは、角が成長して骨化が始まった後、血液も流れなくなって、角の表皮が破けることです)。

 
シフゾウ 左:以前のエリーの角のようす 右:現在のエリー(左)とアオバ

 しかし運動場にはなぜか角の生えた個体がもう1頭います。メスの「エリー」(17歳)で、「アリサ」(11歳)の母親でもある正真正銘のメスです。2年前に私が飼育を担当していた当時、エリーの角は長さ5センチほどの「袋角」(ふくろづの:成長中の角)の状態でした。ところが昨年、オスと同じように角が落ちました。そして今では、枝分かれまでした長さ40センチほどの立派な角が生えています。

 娘のアリサは、「父ちゃん」みたいな母親エリーに何の不安を抱くようすも見せず、寄り添って過ごしています。みなさんもぜひ、エリー(というより「エリオ」でしょうか)の雄姿(?)をお確かめください。くれぐれもアオバとお間違えのないように……。


スイギュウのハルナ

 シフゾウのお隣の運動場にはスイギュウの「ハルナ」(25歳)がいます。ハルナは一昨年の夏にシフゾウ舎に引越してきました。

・ニュース「引っ越しをしたスイギュウ『ハルナ』の春から秋」(2014年10月24日)

 ハルナの一日はプールでの水浴から始まります。高齢のためか足が弱くなったハルナにとって、巨体の重さを忘れられる至福のひとときになっているようです。

 担当して間もないある日のこと、水浴するハルナを見守る方の数が多いので、ハルナに変調でもあったのかと心配になり、ようすを確認したことがありました。このときもハルナは気持ちよさそうに水につかっていましたが、その表情を見ると、こちらも気持ちがほぐされていきます。これが来園者のみなさんの視線を自然に集める理由かもしれません。まもなく夏本番です。プールで過ごすハルナから「涼しさ」もお届けすることになるでしょう。

 そして、ハルナのお隣にはニホンカモシカの「コタロウ」がいます。間もなく2歳になるオスで、昨春、井の頭自然文化園から来園しました。以前にいたメスの「チハル」(昨年春、埼玉県こども動物自然公園に移りました)に比べ、飼育係を怖がることがなく、時が経つと威嚇するような態度も見せるようになりました。わたしが放飼場の中でコタロウに背を向けて作業をしていると、不意打ちするように真後ろで大きな鼻息や足音を立てて威圧してきます。初めはドキッとさせられましたが、徐々に慣れて、無視するように努めました。

 やがてコタロウの威嚇するような態度も減っていき、飼育担当になって3か月が過ぎた今ではお互いを気にせずにいられるようになりました。
ニホンカモシカのコタロウ

 3種の動物がまるで長屋のような施設「シフゾウ舎」でくらしています。個性豊かな面々にぜひ会いにきてください。

〔多摩動物公園南園飼育展示係 中尾理幸〕

(2015年07月10日)


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