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季節の移り変わりとタテハモドキの姿の変化
 └─2015/03/29

 晴れた午前中、多摩動物公園の昆虫生態園大温室の通路周辺には、翅を広げた大きさが5〜6センチほどのチョウがあちらこちらにじっととまっています。翅を少し開いてV字に保ちながら、ときどき開いたり閉じたりして日光浴をしています。

 
いずれもタテハモドキ秋型。翅を開くと目玉模様が目立つ

 翅を閉じると周りの色と同化して見落としがちですが、開くと一転して橙赤色に目玉模様が目立つエキゾチックなチョウ、それがタテハモドキです。名前にモドキとつきますが、れっきとしたタテハチョウ科の一種です。もともと南西諸島に生息し、九州以北で発見されるものは迷チョウとされていましたが、分布を北方へ広げ、九州でも定着しています。


タテハモドキ夏型。閉じたときに見える翅裏面に小さな目玉模様が見える

 タテハモドキは発生する季節によって翅の形状や模様が大きく異なります。幼虫のときに短日(昼が夜よりも短い)かつ低温条件下で育てると秋型に、長日にすると夏型になります。秋型は翅の外縁の凹凸が大きく、裏面は褐色で枯葉そっくりです。一方、夏型は明るい色で、裏面にも小さな目玉模様があります。

 多摩動物公園でも春の訪れとともに日がのび、幼虫飼育室にも陽の光が長時間あたるようになりました。秋から冬の間に羽化するのはすべて秋型でしたが、このところ夏型へと変わってきています。中には両方の特徴をあわせ持つ中間型が出ることもあります。タテハモドキの季節の移り変り(季節型)をぜひお楽しみください。

〔多摩動物公園昆虫園飼育展示係 若井直美〕

(2015年03月29日)


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