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30年後を見据えて多摩動物公園の林を切る
 └─2015/03/20

 今年(2015年)2月下旬から昆虫生態園南面の木を切っています。お別れ遠足で昆虫坂を上る子どもたちからも生態園がよく見えるようになりました。子どもたちが大人になり、お子さんを連れて多摩動物公園を訪れるころには、ふたたび生態園南斜面では木を切っているかも知れません。


昆虫園の南の斜面

 1958年の開園から56年が過ぎた多摩動物公園には、数多くの木々が今なお残されています。かつてこの地が七生村であったころ、多摩動物公園の周辺にはたくさんの雑木林があり、人々のくらしを支えていました。高度経済成長期に入ると東京のベットタウンとして宅地開発が進み、雑木林は住宅地に変わっていきました。今では、多摩動物公園の雑木林は残された貴重な緑となっています。雑木林にはさまざまな動物や昆虫がくらし、ゆったりのんびりした雰囲気を醸す多摩動物公園の魅力の一つになっています。

 多摩動物公園では、開園50周年を迎えた2009年に樹林地管理計画を策定しました。その中で、多摩動物公園の雑木林を将来にわたって守るため、成長した木々を順次伐採して「萌芽更新」を促す中長期的な取り組みを示しました(萌芽更新とは、樹木を伐採して切り株から芽が生え出るよう促し、森林の再生を図ること)。園内で伐採した木々は、これまでベンチや炭に加工して利用してきました。


TAMA GREEN LION PROJCTのための木材

 また、2012年には 「TAMA GREEN LION PROJECT」を立ち上げ、木材資源が循環する取り組みを始めました。その一環として、伐採されたコナラをチップにし、紙に混ぜてノートを作って配布しました。最近では、イベントのポスターや職員名刺などにも使われています。


木のチップで作った紙でポスターを作成

 雑木林を守る取り組みは、動物園の関係者にとどまらず、 NPO団体や専門学校など多様な人々との協働を作り出しました。たくさんの方々にご協力をいただけたことは、多摩動物公園にとって大変にうれしいことでした。また、身近な生きものの復興を進めてきた成果として、2014年には園内でホタルの観察会を開催できるまでになりました。雑木林が年間を通じて園内の水循環を調節し、ホタルが自生できる自然環境を創り出しています。雑木林の存在が、生物多様性を学ぶ場を提供してくれています。

 今も、そしてこれからも、多摩動物公園が生物多様性を守り学ぶ場として、人と動物と雑木林が織り成す取り組みを継続することによって、雑木林の素敵な循環を次の世代に残していきたいと思います。私たちは、来園する一人でも多くの人々にそうした多摩動物公園のポリシーを知っていただきたいと考えています。

〔多摩動物公園園長 福田豊〕

(2015年03月20日)


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