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ナガサキアゲハに注目!
 └─2014/08/29

 インドから日本にかけて分布するナガサキアゲハは、日本では最も大きなチョウのひとつです。日本で見られる黒いアゲハチョウのなかまでは尾状突起(後ろ羽の後端にある尾のような部分)がない唯一の種ですので、すぐにナガサキアゲハだと分かります。

 ナガサキアゲハの食草は、ほかのアゲハチョウ属のチョウの食草にもなるナツミカンやウンシュウミカンなどのミカン科の植物です。同じミカン科でも、ほとんどのアゲハチョウ属のチョウが食べるカラスザンショウや、アゲハ(ナミアゲハ)の食草のハマセンダン、カラスアゲハの食草のコクサギなどは食べません。体がとても大きいため、シロオビアゲハやナミアゲハなどに比べると、食べる量も半端ではありません。幼虫や蛹も巨大になり、ナミアゲハと比べるとその大きさが分かります。

 多摩動物公園昆虫園の飼育室では、育て上げた蛹を羽化箱に整然と並べて、羽化を待ちます。無事羽化したチョウは、昆虫園の大温室に放され、成虫としての生活を始めます。

 大温室では昆虫園で育てられ放されたナガサキアゲハのペアが交尾するところも見られます。ナガサキアゲハのメスは暑い場所が苦手なようで、活動時間帯も朝夕が多く、日中に交尾がおこなわれる場合でも日陰のことが多いようです。

 現在、昆虫園で飼育展示しているナガサキアゲハの親は、2014年6月に石垣島で得られた3頭のメスで、後ろ羽にある白い斑紋が大きいことが特徴です。8月初旬現在三世が育っているので、9月に入ると昆虫園生まれの三世が大温室を飛び回る姿が見られることと思います。 

 ナガサキアゲハは、もともと中国・四国地方より南で見られたチョウですが、近年になり分布が東へ拡大していて、2000年には都内でも見つけられました。昆虫園でナガサキアゲハの実物を観察したら、ぜひともご自宅の近くでも探してみてください。ナガサキアゲハの魅力が体感できることでしょう。

写真上:ナガサキアゲハの蛹(左)とナミアゲハの蛹
写真中上:一日で丸坊主になったミカンの葉
写真中下:羽化箱に並べられたナガサキアゲハの蛹
写真下:木陰で交尾するペア(上がメス)

〔多摩動物公園昆虫園飼育展示係 櫻井博〕

(2014年08月29日)



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