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エミューのひな、大きくなりました
 └─2013/10/11

 2013年春、多摩動物公園のエミュー「エヴァ」が放飼場上部の平らな地面に産卵しました。卵は濃い緑色で長径15センチ前後あります。エヴァの産卵後、オスの「アジット」の子育てが始まりました。エミューはオスだけが約2か月間卵を温め続けます。孵化後もオスだけがひなの世話をし、メスはまったく子育てに参加しません。卵を産んだところで、役目を十分に果たしたという感じです。

 2013年5月30日から6月5日にかけて4羽のひなが孵化しました。孵化直後のひなは首と足が短く、おとなの体型とは程遠い感じです。全身ふわふわの綿羽で覆われ、茶色と黒の縞模様はまさに「ウリ坊」でした。
 ちょうど梅雨の時期にかかり、多湿と肌寒い日が続いたので、アジットはお腹の中にひなたちをもぐり込ませて座り、温めていました。父親が世話しているとはいえ、雨が続くと担当者としてはひなたちのようすが気が気でなく、保温用ランプを設置して、暖を取れるようにしました。

 エミュー舎にはエヴァとアジットのほかに、もう1羽オスの「マンガラ」がいます。アジットは子育て中、エヴァとは良好な関係を保っていますが、マンガラとはオス同士のせいか、よく小競合いをしました。父親としてひなたちを守るのに必死なのでしょう。マンガラは、放飼場上部で過ごすアジットたちのエリアには入らず、いつも下部の観覧通路側にいて住み分けています。エヴァはどちらのエリアも行き来して自由な存在です。

 ひなたちは孵化後60日目ぐらいから、少しずつ行動範囲を広げていき、父親から離れていることも増えてきました。
 夏には、ホースにじょうろの先をつけた手作りの簡易シャワーを設置して暑さ対策をしました。動物園でも節水を心がけていましたが、気持ちよさそうに水浴びするエミューたちを見ると、ついつい蛇口をひねる回数も増えてしまいました。

 今では、ひなといっても手のひらに乗るようなサイズはすでに過ぎ、エミュー舎をのぞいても一見わかりにくいかと思います。おとなのエミューよりやや小さめで、全体的に黒い色をした4羽がエミューの子どもたちです。からだは小さめですが、さすが走禽類、足は太くてがっしりしています。突然走り出したり、垂直にピョンととび跳ねたりと奇妙な動きをすることがあり、まるで人間の子どもがはしゃいで遊んでいるようにも見えます。

 これからの成長ぶりと、親からの自立の過程には大変興味をそそられるところです。

写真上:孵化直後のエミュー親子
写真中:孵化直後のひな
写真下:4か月齢(中央4羽)

〔多摩動物公園南園飼育展示係 生井沢初枝〕

(2013年10月11日)



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