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モウコノウマの世代交代
 └─2011/12/23

 2011年11月2日、多摩動物公園のモウコノウマ「サーシャ」が333日の妊娠期間を経て元気な子どもを産みました。6産目にして初めてのオスの誕生です。

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 サーシャの第一子、メスのクリス(頭文字C)は、現在千葉市動物公園にいます。2〜4番目の姉妹ダイアナ(D)、エーコ(E)、フルール(F)は多摩動物公園でごらんになれます。5番目の子は2010年10月に生まれましたが、当日死亡してしまいました。この子はグレース(G)と名づけました。

 そして今回、アルファベット順の命名というルールに従い、「H」から始まる名前を考え、たくましく立派に育つように「ハーン」と名づけました。彼らの祖国モンゴルの言葉に当てはめると、ハーンは王様を意味します(ただし、モンゴル語で使われるキリル文字やその転写アルファベットでは、HではなくXの文字を使います)。

 2010年のグレースの誕生の死亡の後、年齢などを考え、サーシャの繁殖はあきらめようと思っていました。しかし、モウコノウマは野生ではいちど絶滅してしまった種です。世界各国の動物園の努力によって約2000頭まで増えたとはいえ、まだまだ保護が必要な種です。相性のよいサーシャとオスのレオとの間にもういちどチャンスを!ということで、昨年の冬に再び繁殖を目指した結果、12月に交尾を確認し、不安と期待の日々を重ねてハーンが誕生しました。

 生後間もない子どものようすを確認しようと扉ごしに室内をのぞくと、サーシャは今まで見たことのないような鋭い「にらみ」をきめ、そのまなざしには怖さと同時にサーシャの母性を感じました。

 サーシャが子育てに専念すると同時に、隣の部屋では父親のレオが体調を崩していました。レオは、サーシャがいる放飼場に毎朝スキップするように嬉しそうに出て行っていたので、サーシャとともに過ごせない時間がこたえたのかもしれません。潜伏していた内臓疾患が急激に悪化してしまったのです。治療の甲斐なく、2011年11月12日に28歳大往生を遂げました。

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 親子3頭での同居を考えていただけにレオの死は残念でしたが、柵越しに親子の対面をすることはできました。レオとハーンの間に親子の認識はないでしょうが、私には彼らの間で「今後のモウコノウマの発展に貢献するため立派に跡を継いでくれ」、そしてなにより「サーシャのことをたのむ」という会話があったように思えてなりません。

 レオとサーシャの仲むつまじい光景はもう見られなくなってしまいましたが、これからは成長していくハーンとそれを見守るサーシャ、そして今までと変わらずおてんばな三姉妹がみなさんの来園をお待ちしています。レオのためにお花をくださった方々には、この場を借りてお礼申し上げます。

〔多摩動物公園南園飼育展示係 齋藤麻里子〕

(2011年12月23日)



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