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がんばれ!シロオリックスのブルーム
 └─2011/12/09

 2011年に入り、シロオリックス、グレビーシマウマ、そしてアミメキリンが生まれ、多摩動物公園のサバンナはにぎやかになりました。子どもたちは順調に育ち、いよいよ群れ入りの日を迎えました。今回は子どもたちの中でも、とくに「痛い」群れ入りとなってしまったシロオリックスの「ブルーム」についてお伝えします。

 2011年8月31日、ブルームは母親の「ブランチ」と一緒に初めて大放飼場へ出ました。ブルームはとても緊張しているように見えました。動きもぎこちなく、母親や群れの近くにいなければならないのに1頭だけ離れた所にいることがよくありました。

 私たち飼育係はそんなブルームを心配していましたが、「群れから離れていると危険だ」ということは、ブルームが自分で学んでいかなければなりません。

 ついに9月6日、私たちの不安が的中する事故が起きてしまいました。ブルームがグレビーシマウマと接触し、右角を根元から折られてしまったのです。シロオリックスは長くて弓形の角が特徴ですが、長いのでときどき折ってしまうことがあります。

 しかし、ブルームの場合は頭と角を繋ぐ部分が剥がれてしまいました。こうなってしまうと、角をすべて取り除かなければなりません。急遽手術がおこなわれ、ブルームはそのまま入院することになりました。

 入院は17日間に及びましたが、ブルームは順調に回復しました。退院後は体力回復のため、小さな運動場に1頭で過ごしていました。じつは母親のブランチは、一度群れから姿を消してしまったブルームを受け入れられず、退院したブルームは1頭で過ごすことになったのです。厳しいようですが、サバンナの動物の一員としてブルームは群れ入りに再挑戦しなければなりません。

 10月12日、ブルームの2度目の群れ入りをおこないました。今回は前回と違い、母親を頼ることができません。まずはシロオリックスの群れの一員として振る舞う必要があります。片方の角を失い、ユニークな姿となってしまったので、ちゃんと群れに入れるか心配でしたが、幸いなことに少しずつ認められたようです。

 では、ほかの種類の動物たちとはどうでしょうか? 一度痛い目にあったので、前よりもかなり慎重に距離を保てるようになりました。

 今ではシロオリックスの群れに溶け込み、ちゃんと自分の身を守れるようになりました。失ってしまった右角が再び生えてくることはなく、痛々しい姿になってしまったブルームですが、サバンナでくらすために知っておくべき掟を、身をもって学んだようです。動物には動物のルールがあり、色々な動物が同じエリアでくらすサバンナにはサバンナのルールがあります。それらのルールを学んでいくことが、サバンナの子どもたちに課せられた成長の1つのステップです。

写真上:群れの中のブルーム
写真下:片方の角を失ったブルーム

〔多摩動物公園北園飼育展示係 伊藤香緒里〕

(2011年12月09日)



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