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チンパンジーに生の木を!!
 └─2010/03/05

 ある風が強い日のことでした。風でしなった枝をつたって、チンパンジーの「アンナ」(メス、4歳)が電柵(さわると電流が流れる柵)で囲われた木に登ってしまったのです。葉を食べ、枝のまたに体を入れてくつろぐ姿は、なんとも楽しそうな表情でした。その姿を見て、「木に登らせてあげたいな……」と思ったのです。

 そこで、もともと丸太を差してあった基礎部分を加工して、そこに木を差そうという先輩のアイデアで「ポット」ができました。木を受けるための金属製の筒です。

 せっかく設置しても、あの怪力集団の手にかかって引っこ抜かれてしまう、なんてことも十分に考えられるので、ボルトで固定できるようにしました。立てる木は、伐採予定の園内の木や、やぶの中の木を選びました。

 木を運んでポットに差し込む作業はかなり大変でした。モノによっては、軽トラックにロープでくくり付け、4~5人で引っぱりあげて差し込むこともありました。

 チンパンジーたちの反応はというと、予想どおり、まず子どもたちがむらがります。アンナを筆頭に、つぎつぎと木に登りだしました。ゆすったり、やぐらやワイヤーから飛び移ったり、葉を食べる、樹皮を削る、アリ塚やUFOキャッチャー(枝を使って容器内の餌を外に出す遊具)に使う、といったぐあいで……やりたい放題です! ただ、そんな彼らはどんな時よりも生き生きとした顔をしているのです。

 木を立てるこちらの苦労もむなしく、木はあっという間にさびしい感じになってしまいますが、木の種類や大きさによっては、1~2週間もつこともわかってきました。

 木を立てるのにも気合いと覚悟が必要なので、交換は不定期ですが、木に登るチンパンジーは見られるはず。チンパンジーのチンパンジーらしい動きを、ぜひともごらんください!

〔多摩動物公園北園飼育展示係 木岡真一〕

(2010年03月05日)



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