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年に一度のイベント? トビハゼの求愛
 └─2007/06/29

 葛西臨海水族園の「東京の海」エリア最後の水槽「泥干潟」は、一見泥だらけで何もいないように見えます。でもよく探してみてください。泥の上に魚が見えませんか? それがトビハゼです。

 トビハゼは、九州の有明海などに生息するムツゴロウと同じハゼのなかまですが、沖縄から東京湾までの干潟に生息しています。東京湾では荒川や江戸川、東京港野鳥公園などですがたを見ることができます。また、葛西臨海水族園の近くにある、立ち入り禁止の「東なぎさ」にもすんでいます。

 水槽のトビハゼを観察してみると、水中にいるよりも泥の上にいることが多く、胸びれを使って移動したり、ときにはジャンプするようすも観察できるでしょう。

 トビハゼが陸上でも活動できるのには秘密があります。トビハゼは鰓(えら)でも呼吸しますが、皮膚でも呼吸ができるのです。観察していると、ときどき泥の上で体をゴロッとひっくりかえすような行動が見られます。これは“泥シャワー”と呼ばれ、皮膚が乾かないようにするためとか、排泄物を洗い流すためなどといわれています。また、トビハゼの鰓は鰓穴が小さく、水をたくわえやすい構造になっていて、陸上でも鰓呼吸ができるのです。さらに、ときおり口を水につけて、鰓の水を交換するような行動も見られます。

 このトビハゼ、これから年に一度の繁殖の時期をむかえます。泥の中に巣穴を堀り、その中で産卵するのです。準備ができたオスは体を橙色に変化させます(写真)。そして、垂直にジャンプをしたり、尻尾を振るようにしたりして、メスを巣穴へ誘うのです(その行動を下記リンクから動画でごらんください!)。その後、オスは巣穴の奥の産卵室に産みつけられた卵を孵化するまで保護します。

 野外のトビハゼの繁殖期は、6月の後半から8月くらいまでです。水槽内のトビハゼもまもなく繁殖期をむかえ、動きもあわただしくなってきました。タイミングがよければ、みなさんもトビハゼの求愛を見ることができるかもしれません。

メスを巣穴にさそうオス
 (動画、約40秒、Windows Media Player形式)

〔葛西臨海水族園飼育展示係 橋本浩史〕

(2007年6月29日)



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