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キアンコウの頭についているのは釣り竿?
 └─ 2023/11/17
 葛西臨海水族園の「世界の海」エリア「北太平洋」水槽では、キアンコウを展示しています。キアンコウは、アンコウ目アンコウ科に属し、全長は最大約150cmになる魚です。北海道以南の日本沿岸や黄海、東シナ海に分布しています。おもに水深25~560mの砂泥底に生息し、平たいからだの形や、砂のような模様は、周囲の環境に紛れ、えさとなる小魚や敵から身を隠すのに役立っていると思われます。


砂の上にいるキアンコウ

 キアンコウはえさの小魚が目の前に来るまで、ひたすら待ち続ける「待ち伏せ型」の捕食をする魚です。海底で周囲の環境に紛れ、小魚が近づいてくると、目と目のあいだの額のあたりから伸びている、背びれのひれすじが変化した「エスカ」という疑似餌を、顔のあたりで振り始めます。これに小魚が興味をもって近づくと、キアンコウは突如として大きな口を開き、一瞬で丸のみにします。

 大きな口には陸上用のスパイクシューズのような細く鋭い歯が内側に向かって並んでおり、とらえられた小魚は、もがけばもがくほど歯に引っかかり脱出できなくなります。


エスカを振ってえさを捕食しているようす(こちらは現在展示している個体ではありません)

 現在、水槽で展示をしている個体は全長約25cmと小型で、口の中の観察が難しいのですが、園内の情報資料室では、キアンコウの骨格標本を展示しているので、その構造をじっくり観察することができます。


情報資料室にあるキアンコウの頭骨の骨格標本

 展示しているキアンコウでも、えさを与えるときにエスカを振るようすを観察できます。飼育係が「給餌棒」と呼ばれる棒を使い、えさを目の前に持っていくとエスカを一定の強さや動きで振り始め、えさに食いつきます。本来は、小魚を引き寄せるためにエスカをまるでえさとなる生きものが動いているかのように、不規則に動かして小魚を誘い出すように振ります。

 そこで、遠い位置から給餌棒でえさを動かしても、あまりエスカを動かしてくれません。次の手として、長い釣り糸の先にえさを付けて、顔の前で泳いでいるように揺らして与えることを考えています。こうすることで、水槽内でもエスカをたくみに振り、本来の行動を引き出せるのではないかと期待しています。

 「世界の海」エリアでグースフィッシュというアンコウ科の魚を展示していたときは、水槽を透明なアクリル板で仕切り、グースフィッシュの近くで小魚を展示することで、えさの時間以外でもエスカを振るようすが観察できるようにしていました。現在展示しているキアンコウでもいつでもエスカを巧みに操るようすが観察できるよう、くふうしていきます。

〔葛西臨海水族園飼育展示係 中村雪乃〕

(2023年11月17日)



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