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ミナミイワトビペンギンの繁殖環境の改善
 └─ 2023/04/14
 日本で飼育しているミナミイワトビペンギンは受精率(産み出された卵のうちの受精卵の割合)が低く、無精卵が少なくないため、ひなが生まれないことが大きな課題です。葛西臨海水族園では、この課題の改善に向けてさまざまな取組みを実施しています。今回はそのうちのひとつをご紹介します。

 野生のミナミイワトビペンギンのオスとメスは、繁殖期以外は別々の海域で生活しています。繁殖期になるとオスがまず陸地に上がり、メスを迎え入れるための巣を準備をします。そしてその数日後、メスが合流して繁殖が始まります。

 しかし、水族園ではオスとメスを通年いっしょに飼育してきました。そのため繁殖期には、巣となる場所にオスとメスが同じタイミングで集まることになり、そのままペアを形成していたので、オスが巣作りに集中する期間もありませんでした。そこで、本来の生態を参考にして、繁殖期の前にオスとメスを分け、オスが巣作りに専念する期間を作りました。

 まずは4月頃の産卵に向けて、2月に屋外の展示場から屋内飼育施設に移動させました。屋内飼育施設は4つの部屋が一続きになっていて、オスに2部屋、メスに2部屋を使用し、部屋は扉で仕切りました。これで、オスはペアを作る前に場所の確保や巣材集めなどの巣作りに専念できるようになりました。そして、巣の準備が整ってから同居させるように繁殖環境の改善をしました。


メスとの同居前。オスが巣を作る場所の確保をしているようす



オスの巣の準備が整ったのち、同居をしたときのようす

 今回紹介したことを含むさまざまな取組みを実施・継続した結果、取組み実施前の受精率の平均が約40%だったのに対し、実施後は約60%まで向上しています。おそらく、繁殖期と非繁殖期で飼育場所を変えたことなどを通じて本来の繁殖行動がとれ、繁殖期への切り替えが取組み実施前よりできるようになったからではないかと考えています。

 受精率が向上したことはとても喜ばしい成果です! しかし、今度はひなを孵化させる技術の向上という新たな課題がひかえています。これからもひとつずつ課題に向き合い、よりよい繁殖環境を整えることに尽力していきます。

 繁殖がおこなわれている屋内飼育施設のようすは、「ペンギンの生態」エリアの階段を降りたところにあるモニターでご覧になれます。ご来園の際はぜひ、繁殖のようすにも注目してみてください!


ペアが形成されたミナミイワトビペンギン。左がオスで、右がメス

〔葛西臨海水族園飼育展示係 内山幸〕

(2023年04月14日)



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