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アマモ場は海の保育園
 └─ 2023/03/10
 アマモ場という場所が海にあるのを知っていますか。アマモ場とは、海草であるアマモが生い茂った場所のことで、沿岸の浅い砂地の海に広がっています。生い茂ったアマモは、生き物が外敵から隠れられる場となるほか、海中の二酸化炭素や窒素、リンなどを吸収して酸素をつくるだけでなく、波を抑えて流れの穏やかな環境をつくり出します。それにともない、水中の濁りが沈んで水はきれいになります。

 アマモの葉の表面には、藻類が生え、それをえさとするヨコエビやワレカラのなかまなどの小さな生き物が豊富にくらしています。これらの生物はまた、アマモ場でくらすほかの生物のえさとなっています。このような環境がそろうアマモ場は、イカのなかまやウミタナゴのなかまなどの産卵場として、またクロダイやクロサギなどが子ども時代をすごす場として利用され、まるで海の保育園のようです。

 葛西臨海水族園の「東京の海」エリアには、アマモの水槽が2つあり、アマモ場の豊かさを伝えています。今回はそのうちの1つ、「アマモ場の小さな生き物」水槽の見どころをご紹介します。


「アマモ場の小さな生き物」水槽

 現在、この水槽では、3種類の魚類の未成魚を展示しています。ひし形に近いかたちをした黄色い魚は、アミメハギです。胸びれを動かして、アマモの隙間を泳ぎ、気になるものがあると口で突いていることが多いです。ブラインシュリンプや、ミンチ状のアサリやゴカイを与えると、おちょぼ口のような小さな口ですばやく食べています。

 砂のなかに潜り、目だけを砂の上に出して水槽内をじっと見ていることが多い魚は、マコガレイです。えさを食べるときは、砂から出てきて、跳ねるように泳ぎ回り、中層に漂うえさを食べます。


目を砂の上に出すマコガレイ

 背びれ付近が黒い銀色の魚は、クロサギです。水底付近でアマモに隠れながら、群れをつくり、同じところに留まっていることが多いです。中層や水底付近のえさを、口を突き出して食べています。


クロサギの若魚

 水槽内の魚を見てみると、水槽内でのすごし方やえさの食べ方が種類によって違います。この違いに注目してみると、多様な生き物がくらせるアマモ場の豊かさを実感していただけるのではないでしょうか。

 また、もう1つのアマモの水槽である「東京湾 アマモ場」水槽では、アミメハギやハオコゼなどアマモ場でくらす生き物だけでなく、ボラやマタナゴなど、子ども時代のみをアマモ場ですごす生き物も展示しています。「東京の海」エリアにある2つのアマモの水槽をご覧いただき、保育機能ももつアマモ場の豊かさを感じていただけると嬉しいです。


「東京湾 アマモ場」水槽

〔葛西臨海水族園飼育展示係 森田夕貴〕

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