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展示を維持するための取組み──繁殖と育成
 └─ 2023/02/24
 葛西臨海水族園ではスタッフが海で採集したり、業者から購入した生物のほかに当園で繁殖させたりした生物も展示しています。

 世界の海エリアにある「カナダ西岸」の水槽では、ストロベリーアネモネやグースネックバーナクルなどの無脊椎動物のほかに5種の魚たちも展示しています。5種のうち、4種は当園で繁殖した魚たちです。


「カナダ西岸」水槽

 そのなかでもグラントスカルピンは、カナダ沿岸で採集した個体を展示していましたが、現地では数が少なくなってきており、4年前にスタッフが生物採集に行ったときには10回以上も海に潜っても1尾しか見つからないほどでした。そのため、グラントスカルピンを繁殖させるために、一時的にバックヤードの予備水槽へ、すべてのグラントスカルピンを移動させ、繁殖に取り組むことにしました。

 今回は主に繁殖させる取組みのなかでも重要な、稚魚の育て方について紹介していきます。

 まずはえさについてです。自然の海では卵から孵化したばかりの仔魚しぎょはさまざまな小さなプランクトンを食べて成長しますが、当園では比較的安定して用意できる3種のプランクトンを使用しています。

 大きさが小さい順に「シオミズツボワムシ」、「ブラインシュリンプ(アルテミア)の幼生」、「イサザアミのなかま」。この3種を仔魚の口の大きさに合わせて使い分けています。先ほど紹介したグラントスカルピンにはふ化直後からブラインシュリンプ(アルテミア)の幼生を与えて育てました。


シオミズツボワムシ(左)、ブラインシュリンプ(アルテミア)の幼生(中央)、イサザアミのなかま(右)

 次に飼育容器です。育成する魚に合わせ、仔魚の飼育容器を選んでいますが、今回はグラントスカルピンの育成で使用した、下の写真のような飼育容器を紹介します。

仔魚飼育容器
グラントスカルピンを育成しているようす

 この飼育容器は市販のプラスチックケースを加工して、側面に布やネットを張りつけています。これを水槽に浮かべ、水槽の水をエアリフトで送ったり、エアレーションをおこなったりすることで水槽内と同じ水温や水質を保ち育成できます。さらにえさが抜けない目合いのネットを使用することで常にえさがある状態をつくり、稚魚たちがいつでもえさを食べることもできます。しかし、食べかすやフンが溜まり、汚れやすく、病気が発生しやすいため、毎日の掃除は欠かせません。ちなみにこの飼育容器を作成するのもスタッフの仕事です。そして大きく成長したら展示水槽へデビューしています。

 情報資料室では繁殖に成功し、繁殖賞(国内で最初に繁殖に成功したことを認定する制度、現在は初繁殖認定)を受賞した種を紹介しています。各エリアの展示水槽では繁殖賞を受賞した種も何種類か展示していますのでぜひ探してみてください。

〔葛西臨海水族園飼育展示係 関啓汰〕

(2023年02月24日)



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