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天売島に飛来するウミガラス、回復の兆し!
 └─ 2022/10/28
 ウミガラスは北太平洋や北大西洋の亜寒帯に分布し、5亜種が確認されています。離島や海岸の断崖で集団繁殖し、潜水して魚を捕えるウミスズメ科の大型種です。


ウミガラス

 日本の繁殖地は、現在天売島てうりとうに限られ、かつては1963年に8,000羽が生息していると推定されていました。言い換えれば、天売島で「当たり前に見られることができた海鳥」です。

 しかし、1960年代後半から80年代にかけて、餌資源の減少や漁網による混獲、オオセグロカモメなど捕食者による卵やひなの捕食などが原因で個体数が急激に減少し、2002年には13羽が確認されるだけとなりました。そのため、環境省が主体となり、2001年に保護増殖事業計画が策定され、2003年からデコイ(模型)と音声を用いた誘引や捕食者対策、飛来数や繁殖状況のモニタリングなど、保全活動が積み重ねられました。その結果、2022年5月31日に104羽が確認されるまでに回復してきました。

 とはいえ、環境省が本格的な取組みを始めてから約20年でいまだ100羽です。一度失われてしまった天売島の原風景を元の姿に戻すには、よりいっそう発展した取組みが必要になります。

 次のステップとして、中長期的な視点から保全活動を効果的かつ効率的に展開していくための10ヵ年の行程計画を定めたロードマップが今年策定されました。そのなかでは、国内のウミガラスが自然状態で安定的に存続できる状態を最終目標とし、「飛来数200羽以上、つがい数75~125つがい以上」を中期目標として設定されています。また、これまでの対策に加え、繁殖環境の整備や拡大、個体群の系統解析や個体識別方法の検討・試行などを計画的に実施していくこととされています。

 葛西臨海水族園では、モニタリング機材の提供やこれらの機材設置および撤去作業に人員を派遣するなど、2017年から環境省や天売島を所管する羽幌町はぼろちょう、地域住民、研究者と連携した保全活動を展開しています。今後も関係各所と連携を図り、当たり前にあった原風景を取り戻すそのときまで、歩みを進めていきます。

繁殖地周辺で集まるウミガラス
(提供:岩原真利)
繁殖地で作業しているようす
(提供:環境省羽幌自然保護官事務所)

〔葛西臨海水族園飼育展示係 野島大貴〕

(2022年10月28日)



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