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深海の甲殻類をご紹介──ツノハリセンボン
 └─ 2022/02/13
 葛西臨海水族園の世界の海エリア「深海の生物1」水槽では、イガグリホンヤドカリやトリノアシ、クマサカガイといった無脊椎動物を中心とした深海の生物を展示しています。

 今回はそのなかから、頭にある角のような一対の鋭いトゲが特徴的な「ツノハリセンボン」をご紹介します。


ツノハリセンボン

 「ハリセンボン」と聞くと丸く膨らむフグ科の魚のハリセンボンを思い浮かべるかもしれませんが、ツノハリセンボンは主に深海に生息するクモガニ科のカニのなかまです。

 水深約40~300mの砂地や砂泥底に生息しており、大きさは甲長約3.5cm、足を広げたときの長さは約20㎝にもなります。その名前のとおり体にはたくさんのトゲがあり、体の色は赤味がかっています。明るい場所では目立ってしまいますが、水中では赤い色は海の表層で吸収されてしまい、深海では黒っぽく目立たなくなります。そのため、深海の生物にとって赤い色は外敵から見つかりにくく、自分の身を守る色になっているのです。

 水族園では、漁師さんの深海底曳き網漁船に乗せていただき、採集したものなどを展示しています。そのようすはこちらの記事をご覧ください。

 深海の生物の多くは水面まで上げると水圧の変化や漁網によりダメージを受けて弱ってしまうことが多いのですが、甲殻類は魚類に比べると比較的に強いと言われています。ツノハリセンボンも水圧の変化には強いようで、生きたまま水族園に搬入した数日後には、元気にえさを食べ始めます。

 カニのなかまには気性の荒い種がいるため、ほかの生物と同居飼育する際には注意が必要です。しかし、ツノハリセンボンはふだん底砂の上や壁にしがみついてじっとしており、他の生物に攻撃することはほとんどないため、さまざまな生物と同居飼育ができます。

 一方で、えさに気づいたときはふだんの動きからは想像がつかないほどすばやく両方のはさみ脚でガシッとえさを抱え込み、その後、器用にはさみ脚を使って口に運んで食べます。

 深海の水槽は生物に負担がかからないよう照明を薄暗くしているため見つけにくいかもしれませんが、ご来園の際にはぜひ砂の上や壁をよく探して観察してみてください。

〔葛西臨海水族園飼育展示係 関啓汰〕

(2022年02月13日)



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