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管状の口をもつ魚、クダゴンベ
 └─2021/02/19
 葛西臨海水族園の「東京の海」エリアにある「伊豆七島の海1」水槽は、岩肌にヤギ類やウミトサカ類が群生し、海水が安定して流れる水深約10~30mの環境を再現しています。一見、植物のように見えるヤギ類やウミトサカ類ですが、じつはサンゴやクラゲと同じ刺胞動物のなかまです。とくにヤギ類は木の枝のように分岐する構造が特徴的で、その複雑な構造をさまざまな生物が利用しています。

 水槽では、色鮮やかなキンギョハナダイたちが目をひきますが、他にもとてもきれいな、白地に赤い網目模様をした全長10cmほどの魚がいます。それがクダゴンベです。


ヤギに乗るクダゴンベ

 ゴンベのなかまはサンゴや岩場の上にとまって大きな目をキョロキョロと動かし、獲物を探しながら周囲を警戒する姿が、タカ(=ホーク)に似ていることから、英語で「ホークフィッシュ」と呼ばれています。ヤギやウミトサカのなかまをすみかとするクダゴンベもゴンベのなかまで、大きな胸びれを広げてヤギの枝にとまり、ときおり大きな目をキョロキョロと動かしている姿が見られます。

 クダゴンベのもう一つの特徴は、その名の通り“クダ”状の細長い口です。この口を岩の割れ目やヤギの隙間などの狭いところに差し込み、隠れている甲殻類を挟むようにして捕らえます。また、ヤギの上に乗って、流れてくる小さなえさを吸い込むようにして食べるのにもとても便利な形をしています。


管状の口

 水中を泳ぎ回っている魚とは違い、給餌時間でもヤギの近くでえさを待っています。そのため、あまり離れたところにえさを撒いてしまうと、他の魚に先を越されてしまいます。そこで飼育係は、クダゴンベが待っている場所をしっかり確かめながらえさを与えています。

 他にも水族園ではメガネゴンベやスミツキゴンベといったゴンベのなかまを展示していますが、管状の口をもつものはいません。この違いを見ていると、クダゴンベの便利な管状の口は、食べるものにあわせて進化したのではないかと思えてきます。そうした見方も楽しみながら、他にはない特徴をもつクダゴンベをぜひ観察してみてください。

〔葛西臨海水族園飼育展示係 八木花乃香〕

(2021年02月19日)



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