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移動水族館、活動休止中の生き物たちの健康管理
 └─2021/01/29
 葛西臨海水族園の移動水族館は、障がいや病気、高齢などの理由で水族園に来園することがむずかしい方々のいる施設へ、水槽を載せた「うみくる号」と機材などを積んだ「いそくる号」の2台の専用車両で訪問し、海の生き物の魅力をお伝えしています。


生き物の健康状態を把握するため、しっかり観察をします

 コロナ禍にあっても感染防止対策を徹底し、都内のさまざまな施設へ「うみ」をおとどけしてきた移動水族館でしたが、2021年1月現在、都の緊急事態宣言のもと、一時的に活動を休止しています。

 もちろん、活動休止中も移動水族館専属の生き物たちの健康管理は欠かせません。飼育作業は毎日あります。しかし、長期の活動休止になると困ったことが起こります。それは水槽内での魚どうしの縄張り争いによるケガです。

 チョウチョウウオやキンチャクダイのなかまなど、縄張りをもつ魚を多く飼育しているのですが、ふだんは飼育用の水槽から「うみくる号」の水槽に移すと環境が変わり、縄張りがリセットされ、比較的なかよく過ごします。ところが、同じ水槽で長期間飼い続けると縄張りを主張して喧嘩を始めてしまうことがあります。そのような場合は、隠れ家を増やす、魚どうしの組み合わせを変えるなどの工夫で縄張り争いを防ぎます。

 また、大変なことばかりではなく、この機会はチャンスでもあります。魚たちの縄張りや強さの優劣は、個体差や水槽内に入れた順番など、複雑なバランスの上で成り立っていますが、優劣が把握できれば移動水族館の展示で新たな組み合わせに挑戦することができます。幸いじっくりと観察できる時間はいつも以上にあります。不意にできた活動休止中の時間も無駄にしないよう、日々努力して飼育に取り組んでいます。

 「うみくる号」と「いそくる号」は洗車とワックスがけをしてピカピカに磨き上げ、出発の時を待っています。活動がない間も準備は万全です。あとはこの事態の一日も早い収束を祈るばかりです。

〔葛西臨海水族園教育普及係 服部詠一〕

(2021年01月29日)



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