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大きくなったホシテンス
 └─2019/12/20

 2019年2月22日の記事「『海のゆりかご』の中の幼魚たち」でご紹介したベラのなかま、ホシテンス。すくすくと成長し、このたび葛西臨海水族園「東京の海」エリアの「伊豆七島の海3」水槽に引越しをしました。今回はホシテンスの観察ポイントをご紹介します!

 ホシテンスは日本では伊豆や和歌山、琉球列島などの岩場やサンゴ礁近くの砂地にすんでいます。背中にある黒い斑点模様が「星」のように見えることからこの名前がついたと言われています。


 「観察ポイントその1」は、成長するにつれて姿が変わることです。以前の記事で紹介したときは体色が黒く、頭の上の長く伸びた背びれが旗のように広がる「幼魚」の姿でした。頭を下に向けヒラヒラと泳ぐようすは、海藻の切れ端などの浮遊物に擬態をしていると言われています。

 現在は「若魚」と呼ばれる姿で、体色が薄くなり、星の模様が目立ち、伸びた背びれの先端も広がりが少なくなりました。大きくなって擬態をする必要がなくなったからか、頭を下にして泳ぐことも少なくなっています。この後、成魚になると体の模様や顔つきが変化していきます。どのように変わっていくのかお楽しみに。

 「観察ポイントその2」は、砂に潜ることです。ベラのなかまは砂に潜って休むものが多いことが知られています。ホシテンスも砂に潜るのですが、休む時以外にも、幼魚の時期は危険を察知するとすぐ頭から砂の中に潜っていました。成長してあまりそういう姿は見られないかな……と思っていたのですが、意外にまだ怖がっているのか、他の魚に威嚇されたときや水槽内で作業するときはすぐに砂に潜ってしまいます。日に日に水槽に慣れてきているので、砂に潜る姿を見られたら、貴重な瞬間に遭遇したということになります。


水槽の底の砂に近づくホシテンス。中央に黒く「く」の字に曲がって見えるのが魚の体。
細く上に突き出ているのが頭部のひれ。「く」の字の画面奥側が頭部、手前が尾部です。

 このホシテンス、じつは私自身が採集に関わった個体です。担当する水槽でその成長を楽しみながら観察しています。日々成長し、泳ぎ方や姿を変化させていくホシテンスをみなさんも観察してみませんか?

〔葛西臨海水族園飼育展示係 太田智優〕

(2019年12月20日)



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