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おいしいだけじゃない、アサリの話
 └─2019/11/08

 葛西臨海水族園にお越しいただいたとき、みなさんは「東京の海」エリアの2階に立ち寄られているでしょうか? このエリアは水槽を上からのぞき込めるだけではなく、大きい水槽では観察しにくい小さな生き物を展示している小型水槽が並んでいます。そのうちの一つが「アサリの浄化」水槽です。

 アサリは個体ごとにさまざまな殻のもようをもつ、個性的な美しい貝です。生息域は非常に広く、日本では北海道から九州にかけて各地に分布しています。おもに砂泥の干潟にすみ、筋肉質の「あし」とよばれる器官を使って砂の中にもぐります。


アサリの殻には独特の模様がある

 家庭ではおいしく食べられているアサリですが、おいしいだけではなく、ぜひ知っていただきたい能力をもっています。その能力とは、水をきれいにする力、つまり水質浄化能力です。

 「能力」などと硬い言い方をしましたが、アサリにとってはえさを食べているにすぎません。アサリは水中に漂っている有機物や小さなプランクトンを水ごと吸い込み、えらでこし取って食べています。そのおかげで、海のにごりの原因となる有機物が取り除かれ、結果的に水がきれいになっているのです。


殻の間から水管を出している

 えさを食べているアサリを観察してみましょう。殻の間からにょきにょきと2本の管が出ています。これは「水管」という器官です。片側から濁った水を吸い込み、もう一方からきれいになった水を吐き出しています。生きたアサリを水の中から取り出すと、この水管から水がとんでくることがあります。みなさんも潮干狩りなどで生きたアサリを手にしたらぜひ試してみてください。


展示水槽

 葛西臨海水族園の「アサリの浄化」水槽では植物プランクトンでにごった水をつくり、それをアサリにえさとして与えています。アサリがプランクトンを摂取した後の水は隣の水槽に流れ込むようになっていますが、水の透明度があがり、水がきれいになっていることが一目でわかります。浄化能力を発揮しているアサリの姿を間近で観察してみてください。

〔葛西臨海水族園飼育展示係 八木花乃香〕

(2019年11月08日)


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