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お世話になっています! 掃除名人のゴマハギ
 └─2019/06/21

 飼育係がおこなう数ある作業の中で、大切な仕事の一つが「水槽掃除」です。来園者の方々にきれいな水槽を見ていただくために、毎朝の掃除は欠かせません。

 水槽のアクリルガラスや壁面の汚れになるのは、付着珪藻などの藻類、いわゆる「コケ」です。しかし、掃除してもすぐに汚れてしまう飼育係を悩ませる水槽があります。その一つが葛西臨海水族園の「世界の海」エリアにある「インド洋 1」水槽です。


 この水槽ではリュウキュウスガモという海草を育てています。海草は光合成をして栄養を蓄えるので、太陽光のかわりに強い光を出すライトを水槽の上に設置してあります。

 ただし、ライトのおかげで海草たちはよく育つものの、コケも元気に育っていきます……。このコケが曲者で、ものすごい勢いで増え、壁はもちろん、ひどいときにはせっかく育てた海草の表面にまで付くことがあります。壁と掃除するように海草の表面をスポンジで磨く──などできるわけもなく、そうなるとお手上げ状態です。


 しかしこんなとき、飼育係の強い味方になってくれる生物がいます。 それはゴマハギという魚で、ニザダイのなかまです。ニザダイのなかまは草食性が強く、水槽の壁や岩についているコケを食べてる行動がたびたび見られます。同じ水槽にいるニザダイのなかま、サザナミハギが、水槽の壁についたコケを食べることは以前の記事で紹介しました(「壁についたキスマーク、だれのしわざ?」。

 このゴマハギの頼れるところは、リュウキュウスガモの表面についているコケだけを器用に食べてくれるという点です。じつは以前、やはり海草の表面についているコケを食べていたサザナミハギが、海草も一緒に食べてしまい、泣く泣く非展示エリアに移したことがありました(現在展示中のサザナミハギには海草を食べるようすは見られません)。


 しかし、ゴマハギは海草の表面についているコケだけを器用に食べてくれるので飼育係は大助かりです。この「掃除名人」(?)としての能力が買われ、特設展「海のゆりかご」水槽にもデビューしています。

 ゴマハギなどの魚たち以外にも、水槽内のさまざまなものをえさとして食べ、掃除を手伝ってくれている生物がたくさんいます。ひっそりと大活躍している「掃除名人」な生物たちの働きぶりにもぜひ注目してみてください。

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〔葛西臨海水族園飼育展示係 石神まゆか〕
  
(2019年06月21日)


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