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満を持しての初展示! ロングスナウテッドボアフィッシュ
 └─2018/11/30

 葛西臨海水族園の「世界の海」エリアにある「オーストラリア南部」水槽で一際大きく、長く突き出た吻とひれが印象的な魚がいます。この魚は「ロングスナウテッドボアフィッシュ」です。「ボア」(boar)とは、来年2019年の干支の動物でもあるイノシシのこと。長い吻がイノシシの鼻のように見えることからこの名前がついたのでしょう。


 オーストラリア南部の固有種で、このたび展示水槽にデビューしました。満を持しての水族園初展示です。というのもじつは、水族園職員が現地採集の後、園に到着してから展示まで約1年もかかっているからです。

 水族園にやってきた魚たちは基本的に、えさをよく食べるか、健康的に問題ないか、などをチェックしてから展示水槽にデビューします。来たその日のうちにえさを食べ始める場合もあれば、警戒して何週間も食べないこともあります。このロングスナウテッドボアフィッシュも警戒心が強いのか、なかなかえさを食べませんでした。えさの種類も試行錯誤し、自然の海で食べていると言われているクモヒトデやカニなどの生き餌を与えてみましたが、つつくだけで食べるまでにいたりませんでした。口に入れることがあっても、結局吐き出してしまい、食べるようすがまったく見られなかったのです。

 しかし、搬入から7か月が過ぎようとしたある日、ゴカイを口に入れモグモグと噛むようにしてからすっと飲み込みました。あまりにも自然に食べたので、本当に食べたの?と目を疑いました。もうひとつ与えると、同じようにモグモグと噛んでから飲み込んだのです。

 その日を境に少しずつ、ゴカイをはじめ、それ以外のえさも食べるようになりました。しかし、食べるのがとてもゆっくりなので、他の魚から横取りされないよう、トングでえさを与える練習もしました。すると、飼育係が水槽の前を通るたびに、えさをねだって近づいてくるようになりました。今までずっと食べなかったのがうそのようです。

 こうしてようやく展示デビューを果たしたロングスナウテッドボアフィッシュは、ほかの魚たちとの間で問題が生じることもなく、水槽内を落ち着いて泳いでいます。ときおりアクリルガラス越しにこちらをうかがうようすは、えさを期待しているかのように見えます。そんな姿もぜひ見に来てください。展示デビューまでの裏話を知っていると、いっそう興味をもってご覧いただけると思います。

〔葛西臨海水族園飼育展示係 石神まゆか〕

(2018年11月30日)


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