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夢のようなユメナマコの展示
 └─2018/09/28

 2018年8月8日から22日まで、葛西臨海水族園ではユメナマコを展示しました。ユメナマコは太平洋の深海300~6,000メートルで生息する最大25センチほどの遊泳性のナマコです。水族園での展示は今回が初めてで、今年の8月5日におこなわれた国立研究開発法人海洋研究開発機構(JAMSTEC)主催の「ハガキにかこう海洋の夢コンテスト」の入賞者を対象とした「かいれい」体験乗船イベントの際、無人探査機「かいこう」により採集されました。この時のようすは、乗船した職員によるレポートを掲載しました。

JAMSTECの深海調査研究船「かいれい」体験乗船レポート(2018年9月21日)

 モニターにユメナマコが突然現れたとき、「かいこう」チームは素早いマニピュレータ操作でスラープガンを動かし、採集しました。その操作技術はまさに神業でした。


採集時の動画

 ユメナマコは頭に、いぼ足が膜でつながって水かき状になったヒダがあります。お尻の方にもそのヒダが左右に1枚ずつあり、これで水中を泳ぎます。外敵から襲われたときは、もろいゼラチン質の外皮が剥がれ落ち、光って敵の注意をそらすと言われていますが、体験乗船イベントで実験したときは残念ながら光りませんでした。


輸送中のユメナマコ

 水族園では、展示水槽の中でユメナマコが漂うよう水流を調整しました。また、ユメナマコは海底の泥を食べ、その中に含まれる有機物(デトリタス)を栄養にしています。ためしに水槽内に泥を入れてみたところ、少しは腸管内に泥が入ったようですが、食べるようすは観察できませんでした。

 展示を始めて10日ほど経ったころ、ユメナマコが水槽の中で沈みがちになり、外皮がただれてきました。壁や床に体が擦れたわけでもなく、剥がれ落ちた外皮を調べても細菌などは見あたりませんでした。しかし、ただれが進行したため、8月22日で展示を終了しました。水族園の獣医師にも診てもらいましたが、病原菌などは見られず、細胞が自ら破裂するようすが観察されたそうです。もしかしたら大きな水圧に耐えられるユメナマコの細胞は、水圧がなくなると壊れてしまうのかもしれません。


“夢のようにきれいな姿” が名前の由来のユメナマコ

 今回、18日間の飼育と15日間にわたるユメナマコの展示は日本では初めての記録です。「夢のようにきれいなナマコ」という意味のユメナマコ。その展示がいつの日か夢でなくなるように、今後も研究と工夫を続けていきます。

〔葛西臨海水族園飼育展示係 小味亮介〕

(2018年09月28日)


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