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江戸前を代表する魚、コノシロ
 └─2018/09/07

 みなさんは「江戸前」「寿司ネタ」「光りもの」といえば、どの魚を思い浮かべますか? 光りものは背中が青く、腹の部分が白く光る魚の寿司屋さんでの呼び名です。アジ、イワシ、サヨリ等いろいろな種類の魚がいますが、その中でコハダを思い浮かべた方も多いのではないでしょうか。コハダは、標準和名コノシロの少し小さいとき(全長10~15センチくらい)の呼び名です。成長に伴い、関東では「シンコ→コハダ→コノシロ」と名前が変わる出世魚でもあります。


 暑くなると食欲が出ず、さっぱりとしたものが好まれますが、マグロやハマチなど、脂分の多い寿司ネタの合間には、酢で締めたコハダ等をはさみながら味わうのもよいものです。光りものは鮮度が落ちるのが早く(俗に足が早いと言います)、塩を振り、時間を置いてから軽く水で洗った後、酢に漬けて身をしめることで鮮度の低下を防いで保存性をよくします。鮮魚売場には、サバやサンマの酢じめが真空パックで並んでいますのでおなじみかと思います。

 葛西臨海水族園「東京の海」エリアの「東京湾の漁業」の水槽ではコノシロの群れが見られます。コノシロは繊細な魚で、採集や飼育には注意が必要です。コノシロのほか、マイワシやキビナゴなど、ニシン科の魚は鱗がはがれやすいため、取り扱うときはなるべく体表に触れないよう、水ごと魚をすくうなどの工夫をしています。

水槽の中のコノシロを見ていると、口をパクパクと動かしながら泳いでいることがあります。コノシロは水中のプランクトンを水ごと吸い込み、えらにある櫛の歯のような部分でこしとって食べるのです。えさの時間になると泳ぎが活発になり、さかんに口を開け閉めしながら食べるようすが観察されます。

 水槽の底に近づくコノシロを見かけたら、次に何をするのか見てみましょう。底に口をつけて砂をくわえ、モグモグと動かした後に砂を吐き出すことがあります。砂の中に混じっている何らかの小さなえさを食べているようです。コノシロに近縁なドロクイという魚には泥の中からえさをこしとって食べる習性がありますが、これに近い行動なのかもしれません。

 夏前に採集した個体を追加して、水槽内がにぎやかになったコノシロたち。群れて泳ぐようすをご覧ください。

〔葛西臨海水族園飼育展示係 笹沼伸一〕

(2018年09月07日)



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