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ジャイアントカイトンへの密かな期待
 └─2018/08/17

 色とりどりのイソギンチャクが目をひく「世界の海」エリアの「南アフリカ沿岸」水槽。この水槽で久々にジャイアントカイトンを展示しました。


 ジャイアントカイトンは南アフリカ東部から南西部にかけての沿岸に生息するヒザラガイのなかまです。岩のくぼみにぴったりとくっついて岩に生えるコケ(藻類)などを食べます。日本でよく見かけるヒザラガイの大きさが全長3~6センチほどなのに対し、ジャイアントカイトンは名前のとおり、全長10センチを超える大型種です。

 ジャイアントカイトンは来園者の方々に観察していただくだけでなく、あることを期待して展示しました。それは「掃除係」としての働きです。


 じつは「南アフリカ沿岸」水槽は壁が擬岩(作り物の岩)で覆われていて、そのでこぼこのくぼみにコケがついて掃除がしにくいという悩みがありました。そこで思い出したのが、以前別の水槽でヒザラガイのなかまがよくコケ掃除をしてくれたことです。

 ジャイアントカイトンの大きさからすればコケをきっとたくさん食べてくれるに違いない!と期待し、南アフリカ沿岸に分布しているヒザラガイである本種を水槽に入れました。

 ところが、水槽のコケはいっこうに減る気配がありません。ジャイアントカイトンの位置を毎日確認してみると、移動してコケを食べたと思われる痕跡はあるのですが、ほとんど場所が変わっていません。擬岩にくっついたままじっとしていることが多く、どうやら動き回ってたくさんえさを食べる種類ではなかったようです。

 水槽の掃除係としての働きは今のところあまり期待通りではありませんが、西洋の甲冑を思わせるようなフォルムと、名前通りの大きさからくる存在感のある姿は、きっとみなさんの目にとまることでしょう。カラフルなイソギンチャクたちが目立つ水槽の中で静かにたたずむジャイアントカイトンの“渋い”姿を探してみてください。

・関連記事「ヒザラガイは硬くてやわらかい?」(2012年5月11日)

〔葛西臨海水族園飼育展示係 石神まゆか〕

(2018年08月17日)


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