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ペンギンの「抱卵斑」
 └─2018/07/27

 ペンギンは、おもに南半球に生息する海鳥のなかまです。体の表面は密集した細かい羽毛に覆われています。多くの時間を海上で生活するペンギンにとって、羽毛は体温を保つための重要な役割を担っています。しかし、じつは体の一部の意外なところに羽毛が生えていません。フンボルトペンギンを例にご紹介しましょう。

 その部分は卵を温めるときに見られます。フンボルトペンギンのお腹の下を覗いてみると、下腹部に羽毛がなく、皮膚が露出しているのです。大切な羽毛がなくなっても大丈夫なのかと思う方もいると思います。私も実際に目にしたときは驚きました。

羽毛に覆われ抱卵斑が隠れた状態のフンボルトペンギン
下腹部に抱卵斑が見える

 これは多くの鳥類がもつ特徴の一つで、「抱卵斑」と呼ばれます。羽毛は体温を保つ保温材としての役割をしており、熱を外に逃がしません。しかし、卵を温めるためには温度の高い体表面を卵に直接接触させる方が効率的です。そのため、フンボルトペンギンの場合は、下腹部の一部に抱卵班があり、そこだけ羽毛がありません。さわってみると、表面はすべすべで乾燥しており、しっかり体温が感じられます。

 しかし、これでは水中で体温が奪われてしまうのでは? 心配ご無用! 卵を抱くとき以外は、まわりの羽毛が抱卵斑をしっかりふさぐため、泳いでいるときも皮膚が水にふれることはなく、体温が奪われる心配はありません。

 その仕組み上、残念ながらみなさんが抱卵斑を見つけることは難しいと思います。でも、ペンギンの体を覆う羽毛の下にこんな不思議な秘密が隠されていることを意外だったのではないでしょうか?

 生き物には知られていない体の仕組みやくらしがまだまだあります。ふだんはなかなか観察できない生き物たちの秘密を飼育係の視点から今後もお届けします。

〔葛西臨海水族園飼育展示係 川上壮太郎〕

(2018年07月27日)


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