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タマカエルウオの繁殖シーズン到来
 └─2018/04/13

 葛西臨海水族園の「東京の海」エリアには、波しぶきがかかる小笠原の磯を再現した展示水槽があります。しばらく眺めているとゴツゴツした岩場のすき間から勢いよく水が流れ込み、跳ね散ったしぶきを避けるように岩の上を動くタマカエルウオが見られます。タマカエルウオは八丈島以南小笠原諸島や琉球列島などの波が激しく打ちつける磯に生息しています。


 タマカエルウオは水の中にいることが少ない一風変わった魚です。多くの魚はえらに水を通すことで呼吸をしますが、タマカエルウオは体を粘液で覆って乾燥を防ぎ、皮膚を通じて呼吸をすることができるため、水の外にいても大丈夫です。

 タマカエルウオは岩の上などをピョンピョンと跳ねて移動するときは、長い体を曲げてから尾びれで岩をキックしてジャンプします。また、体を支える大きな胸びれを使って岩をよじ登ることも可能です。タマカエルウオは岩についた藻などをえさとし、下向きの口を使ってこそぎ取るようにして食べるようすが見られます。

 現在このタマカエルウオは繁殖シーズンを迎え、水槽内で求愛行動が見られます。雌雄の区別は頭を見れば分かります。頭の上に三角形をした「トサカ」があるのがオス、ない方がメスです。オスはトサカと背びれを立て、近くのメスに向かって頭を大きく振り回して求愛します。

 水槽の中では、タマカエルウオは岩に開いた穴の中に卵を産み付けます。求愛を受け入れたメスはオスの誘導にしたがい、穴の中に入って産卵します。その後、オスは卵が孵化するまで穴の中や近くにとどまり、卵を守ります。穴から顔を出して外のようすをうかがっているオスがいたら、卵保護をしている最中かもしれません。

 タマカエルウオの求愛行動はちょうど今頃がベストシーズンです。春から夏にかけてのこの期間にぜひご覧ください。

〔葛西臨海水族園飼育展示係 笹沼伸一〕

(2018年04月13日)


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