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キングジョージ島調査採集レポート[5](最終回)
 └─2018/02/28

 キングジョージ島での2週間ほどの採集が終わり、私たち葛西臨海水族園南極調査チームは生物の輸送に取りかかります。南極の海の水温は1℃なので、生物を状態よく運ぶために、その水温を保たなければなりません。そこで使用するのが、大型のクーラーボックスの中に断熱材でできた袋を組み合わせ、保冷効果を高めた特殊な輸送箱です。この中に氷を入れて水温を保ちます。

輸送箱と袋に入れた生物
コリンズ氷河
作業のようす

 輸送用の氷は、小型船でエスクデロ基地から30分ほどの距離にある「コリンズ氷河」周辺に漂う流氷を採集して使用しました。南極では市販の保冷材は入手困難ですが、氷はまわりに豊富にあるため、この方法を取っています。

 ビニール袋に生物と海水をいっしょに入れ、酸素を封入しパックして運びます。1袋に入れる生物の種類や数、海水の量を計算し、ひとつひとつ丁寧にパッキングしていきます。作業はおよそ2時間。冷たい海水で手をかじかませながらの作業です。

 キングジョージ島から日本まで、航空機を利用して生物を運びます。まずはキングジョージ島からチリ最南端の町プンタアレナスまでチリ空軍の輸送機に載せます。その後、チリ国内線に乗り換え、チリの首都サンティアゴまで運びます。キングジョージ島を発ってからここまでの所要時間は50時間ほどです。さらなる日本への長旅を控えているため、ここで生物の状態確認と水換え、氷の追加を行います。生物の状態はどうか、水の汚れはどうか注意深く確認した後、あらかじめ準備をしていた海水を使って袋の中の水を換えていきます。

 サンティアゴから日本までは国際線を乗り継いで、およそ45時間かかります。キングジョージ島から水族園まで合計約100時間の長旅を終えた生物たちは、いったんバックヤードの予備水槽に収容します。生物たちの状態が落ち着いたら展示に出す予定です。そのようすはまた記事でお伝えします。

・これまでの記事
キングジョージ島調査採集レポート[1]
キングジョージ島調査採集レポート[2]
キングジョージ島調査採集レポート[3]
キングジョージ島調査採集レポート[4]

〔葛西臨海水族園調査係 松村哲〕

(2018年02月28日)


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