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冬を越す「ガガブタ」の姿
 └─2018/02/09

 冬も本格的になり毎日寒い日が続き、葛西臨海水族園「水辺の自然」エリアでも冬枯れの景色が広がっています。そんな枯れた景色を見ても面白くない……と思わずに、この時期だからこそ、ぜひ見ていただきたい水草をご紹介します!

 その水草は「湿地の生態(田んぼ)」水槽の水路に転がっています。何もいないように見えますが、水底のほうをよく観察するとバナナの房のような緑色の塊が転がっているのが見えます。この塊が今回の主役、「ガガブタ」の冬の姿です。

 ガガブタは本州、四国、九州の湖沼やため池などに生息する多年生の浮葉植物で、環境省によって準絶滅危惧種に指定されています。名前の由来は葉の形が鏡の蓋に似ているということから、ガガ=鏡(ガガは鏡が転訛した言葉)、ブタ=蓋を表し、漢字では“鏡蓋”と書きます。

 水温が暖かい時期には光沢のあるハート型をした葉(直径7~20センチ程)が水面に浮き、7~9月頃になると中心が黄色く花弁が白い小さな花を咲かせます。

ガガブタの葉

 一方、水中では夏から秋にかけて根がバナナの房のように変形し、さらに肥大して太く短くなり、その根が集合して房状となった「殖芽」(しょくが)をつくります。寒い冬のあいだは根(殖芽)に栄養を蓄えて過ごし、暖かい春になると殖芽から新しい株が育ちます。まさに寒い冬の今だから見られる姿です。


殖芽

 ガガブタを見ていただきたい理由はもう一つあります。じつはこのガガブタ、2年前はうまく育たず、冬になる前に姿を消してしまいました。昨年植えたものが2株越冬し、やっと今年は水路の一部にガガブタが広がるまで数を増やすことができました。今年の殖芽は数が多く、越冬して来年の春にまた葉が出てくる姿を想像するととても楽しみです。

 みなさんも屋内水槽を見た後、「田んぼ」で寒さに耐えながら春を待つガガブタを見に少し寄り道してみませんか? そして春になり青々と葉を広げた姿もぜひご覧ください。

〔葛西臨海水族園飼育展示係 太田智優〕

(2018年02月09日)


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