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エトピリカ──花魁鳥(おいらんちょう)の美貌
 └─2017/09/29

 葛西臨海水族園の「海鳥の生態」ではエトピリカを飼育展示しています。不思議な名前のこの鳥は、おもに北太平洋海域の島々に生息し、日本では北海道のユルリ島とモユルリ島で繁殖する海鳥です。この名前の由来や彼らの美しい容姿について、見どころを交えながら紹介しましょう。


 まず「エトピリカ」というなじみのない不思議な名前は、彼らのくちばしが関係しています。鮮やかな橙色をしたくちばしが美しく映えて見えるため、北海道のアイヌの人々の言葉で「エトゥ」(くちばし)「ピリカ」(美しい)と名がついたといわれています。

 美しいのはくちばしだけではありません。彼らは繁殖期である夏と非繁殖期の冬、年に2回衣替えをします。繁殖期に見られる夏羽もエトピリカの魅力の一つです。

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冬羽

 冬羽は全身が茶褐色でなんとも地味な印象ですが、これが夏羽に変わると雌雄ともに顔面は白化し、目頭の飾り羽が長く伸びて金色を呈し、まるで舞踏会の面をつけたような美しい姿へと変化します。その配色から、白塗りで口に紅をさし、頭にかんざしをした女性を想像させ、古くから「花魁鳥」(おいらんちょう)という名で呼ばれることもあります。

 現在、水族園のエトピリカたちはほとんどの個体が夏羽です。展示水槽ではエトピリカの羽ばたく姿や羽づくろいをする姿が見られます。着物を着た花魁が舞えば、このエトピリカが見せるような華麗な眺めであろうと想像してしまうほどです。

 夏羽の美しい姿が続いてほしい気もしますが、夏も終盤を迎え、彼らの繁殖期も終わりに近づいています。しばらくすると冬羽に変わり始め、今年の夏羽も見納めになります。残り少ない期間ではありますが、エトピリカの美貌に魅せられにいらっしゃってはいかがでしょうか。

〔葛西臨海水族園飼育展示係 川上壮太郎〕

(2017年09月29日)


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