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藻場に群れ泳ぐクダヤガラ幼魚
 └─2017/09/15

 細長い体に口部と尾部がするどく尖ったクダヤガラ。2017年8月24日、葛西臨海水族園「東京の海」エリアの「アマモ場の小さな生き物」水槽に、クダヤガラ幼魚の群れを展示しました。クダヤガラは全長15センチほどになる、タツノオトシゴと同じグループ(トゲウオ目)の魚で、アマモや褐藻類が繁茂する藻場の周辺にくらし、とくに幼魚の頃は数十から数百尾の群れをなしています。


アマモ場水槽でのクダヤガラ

 6月下旬、クダヤガラ幼魚を求めて佐渡島で潜水による採集をおこないました。採集場所は岸から30~50メートルほどで、一帯に設置された波消ブロックのため波の影響が少ないようで、この付近にはアカモクをはじめとした海藻(渇藻類)が繁茂しています。

 この海藻の林を目指して潜り始めると、ほどなく水深5メートルほどの林の周縁に、数百尾にもおよぶハゼ類の稚魚(全長2~3センチのチャガラ)の群れが現れます。群れを観察しているとしだいに目が慣れ、ほんの数尾のひときわ細い魚の姿が見分けられるようになります。これがクダヤガラ幼魚です。


採集のようす。破線囲みの中がクダヤガラ。他はチャガラ

 しかし、このわずかなクダヤガラ幼魚をまとまった数集めることを考えると、効率の悪さに気が遠くなります。気持ちも新たに海藻の林の中へと進むと、海藻の切れ間にツンツンと小刻みに動く、数百尾の細長い魚の群れが現れます。どうやら、クダヤガラ幼魚はサイズごとに群れが異なるようです。

 見つけたのは先ほどよりやや大きい3~4cmほどのクダヤガラ幼魚ですが、これだけの数があれば採集も効率がよいはずです。まわりを3~4人で取り囲み、各自が手網を持って両手を広げながら少しずつ群れに近づきます。群れに手が届くくらいまで近づいた瞬間、すばやく手網を振りかぶせ、まとまった数を採集することができました。

 採集したクダヤガラ幼魚は水族園のバックヤードで2か月ほど飼育し、5~10センチに成長しました。はたして、どのサイズまで「群れ」でいるのか不明ですが、今は群れた状態の展示です。おもに胸びれを小刻みに動かしながら、アマモ群落の隙間を器用に泳ぎ、ときには水中で静止しているようすなどが見られます。

 今回の採集および生物の一時管理は、新潟大学理学部附属臨海実験所の協力を得ておこないました。

〔葛西臨海水族園飼育展示係 田辺信吾〕

(2017年09月17日)


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