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続・新たな視点で見てみると(60)新年早々おめでたい
──グリプトノートゥスアンタルクティクスの放仔
 └─2017/01/20

 葛西臨海水族園の飼育スタッフは大みそかも元日も、生物の世話のために出勤しています。2017年1月1日、休園中の静かな館内を見回っていると、南極の水槽で何か引っかかるものを感じました……。

 「世界の海」エリアの北極・南極の海コーナー「南極2」水槽では、2016年3月から全長が10センチほどにもなる等脚類(ダンゴムシやオオグソクムシなどのなかま)「グリプトノートゥスアンタルクティクス」を展示しています。呪文のように長い名前なので、以降グリプトと略しますが、このグリプトは水族園のスタッフが実際に南極の海に潜って採集して来たものです。採集の様子は昨年のニュースをごらんください。

・「南極レポート2016[4]生物の調査採集」(2016年2月26日)

 等脚類のメスは肢の一部が大きく広がり、お腹に包み込むようにして卵を守ることが知られています。水槽のメスのお腹が膨らんでいることには少し前から気づいていたのですが、かつて、膨らんだメスのお腹を開いてみたら空っぽだったこともあり、今回もあまり期待していませんでした。しかし、元日にどうにも気になって水槽を丹念に見てみると、展示用に作った偽物の海藻になにやら白っぽいゴミのようなものがいくつもついています。よく見えなかったので、偽海藻を少し持ち上げてみてみると、体長6ミリほどで姿は親とそっくりなグリプトの子がいくつもしがみついていました。


作り物の海藻につかまる子とそのメス親

 数日後、お腹のようすを撮影するために、起き上がりにくい狭い水槽でメスにひっくり返ってもらうと、お腹にはまだ数匹の子が残っているようでした。薄い膜越しに子が動いているところを撮影していると、たまたま1匹が外に出てきました。とても小さいのですが形は親とそっくりで、肢を上げるようすも同じです。


子が見えやすいように少し持ち上げた作り物の海藻の下を歩くメス親。
後半は腹部のようすを撮影中、残っていた子が出てきたところ


 出てきた子はほとんど回収し、裏側の水槽で育成を始めています。しかし、展示水槽には捕りきれない子がいくつか残っているので、運がよければ小さなグリプトが見られるかもしれません。

〔葛西臨海水族園飼育展示係 三森亮介〕

(2017年01月20日)


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