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日本沿岸の代表魚、クロダイの展示
 └─2016/06/24

 葛西臨海水族園の館内に入り、大水槽を悠々と泳ぐマグロたちや世界中のさまざまな生物を展示している「世界の海」の水槽を見た後で初めて館外へ出た場所に、潮の満ち引きと波の動きを再現した「渚の生物」の水槽があります。

 ここではマダイをはじめ、カワハギやメバルやフグのなかまなど、日本近海でふつうに見られる生き物たちを展示しています。今回はその中のクロダイを紹介します。


 赤い体色のマダイと比べると、その名の通り色の“黒いタイ”なので、すぐに見分けられると思います。地味な魚に見えますが、水槽内で日の光が当たる場所に来ると、腹側が銀白色に輝き、黒と銀色のコントラストが際立ち、渋い色味を見せることがあります。

 クロダイは琉球列島を除く日本各地、朝鮮半島南部、中国の北部・中部沿岸、台湾に分布しています。水深50メートルよりも浅い内湾、沿岸岩礁域、藻場や砂泥地、河口域などに広く生息しています。丈夫な顎と発達した臼歯を使って、硬い殻をもつエビ・カニや貝類などを噛み砕いて食べるとともに、海藻もえさにする雑食性で、全長約60センチにまで成長します。

 クロダイはオスからメスへ性転換する魚として以前から知られています。初めはオスとして成熟し繁殖に参加しますが、成長するにつれて精巣の中に卵細胞が発達し始め、精巣と卵巣の両方を持つ雌雄同体となります。その後は次第に卵巣が成熟し、メスとして産卵する個体が多くなります。しかし、すべての個体がメスになるのではなく、一部は卵巣が退化し、オスのまま一生を送るといった少し変わった生活を送ります。

 クロダイの繁殖期は春から初夏です。現在、水槽には少しお腹がふくれたクロダイがいるので、そのうち産卵が見られるかもしれません。

〔葛西臨海水族園飼育展示係 笹沼伸一〕

(2016年06月24日)


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